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◆今月のニュース解説
①音波の新しい伝搬現象を発見
――次世代のマイクロ波通信や量子技術への展開に期待――
New Acoustic Wave Phenomenon Discovered: Potential for Next-generation Microwave Communication and Quantum Technologies
②対象に特化した人工画像生成による深層モデルの事前学習
Pre-training Deep Neural Network Models with Target-specific Synthetic Image Generation
――次世代のマイクロ波通信や量子技術への展開に期待――
東北大学の研究グループは,表面弾性波と磁性回折格子の相互作用によって非相反回折が生じることを世界で初めて発見した.この成果は,表面弾性波デバイスと呼ばれる音響素子の新しい可能性を提供するものであり,古典的なマイクロ波通信から量子技術まで幅広く応用されることが期待される.
回折とは,規則正しく並んだ構造に波が当たり,散乱した波が互いに干渉して特定の方向に強い波が生じる現象である.光,音,電子波など,様々な波動に共通する基本的な性質であり,X線が結晶に当たることで生じるブラッグ回折が代表的な例である.通常,回折波の強度は対称的であり,図1(a)に示すように上下(または左右)の回折波の強度は透過波を起点に等しくなる.しかし,特定の条件下ではこの対称性が崩れ,回折波の強度が一方向に偏ることがある(図1(b)).これが「非相反回折」と呼ばれる現象である.光の分野では既に知られており実証されていたが,音波など他の波動で実験的に観測された例はなかった.今回の研究では,表面弾性波と呼ばれる固体表面を伝わる音波において,初めて非相反回折の観測に取り組んだ.理論計算によって,表面弾性波と磁性体の相互作用を使えば,非相反回折の起源となる非対称な散乱が生じることが予測された.そこで,ナノスケールの磁性体を周期的に配置することで回折格子を作製し,その回折格子による表面弾性波の振舞いを詳細に測定した.その結果,上方へ回折される波と下方へ回折される波の強度が明確に異なることが確認され,表面弾性波における非相反回折が実証された(図2).これらの成果が評価され,物理学分野で権威のある国際学術誌Physical Review Letters(2025年1月14日掲載)に報告された.
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