巻頭言 学会の(再)国際化

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Vol.108 No.6 (2025/6) 目次へ

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巻頭言

学会の(再)国際化 (Re-)Internationalization of IEICE副会長 高田潤一

 本年3月に東京都市大学で実施された総合大会では,国際セクションの代表者が集まるAll Sections Meetingが開催されました.本号中でも御紹介しておりますが,海外会員は急激に減少しており,各セクションでの会員獲得も課題になっています.

 海外の研究者が本会の会員になるメリットについて考えると,かつては英文論文誌への投稿が主な目的の一つであったと考えられます.しかし現在では,オープンアクセス誌を含む多数の論文誌が発行され,インパクトファクターが論文誌の質を示す指標として業績評価に用いられる国際的な潮流の中,論文投稿のみを目的に本会に入会する海外会員は大幅に減少したのかもしれません.

 そのような状況下でも海外会員であり続ける方々の多くは,日本の研究者との連携を期待されている帰国留学生です.日本学生支援機構の最新版(令和4年度)の外国人留学生進路状況調査を見ても,工学系の大学院を修了して日本で就職した人が34.5%なのに対して,帰国した人は32.8%とほぼ拮抗しており,今でも母国に帰って活躍する留学生が多いことが伺えます.

 私たちの世代の留学生であれば,多くは博士論文を日本語で執筆できるほどの日本語能力を有していましたが,他方で日本語の習得の必要性が留学生増加の障壁となっておりました.政府の留学生増加計画の結果,現在では多くの大学が英語による大学院プログラムを導入しており,留学生は生活に必要な日本語は修得しても,研究活動や論文執筆は英語で行う傾向にあります.

 研究会や大会は,自由な議論や連携の場として私たちが大切にしてきた財産ですが,従来は日本語での発表・議論が前提でした.英語での投稿や発表も認められていますが,日本語ほど活発な議論が展開されているとは言い難い現状があります.以前は日本人研究者の英語力不足が一因でしたが,最近ではむしろ,大多数が日本人の聴衆である場で,日本人同士が英語でコミュニケーションすることにためらいがあるという状況も見受けられます.いずれにしても,その結果として留学生が本会への帰属意識を持ちにくい可能性があるかもしれません.

 国際委員会では2021年から留学生と海外セクションを対象としたオンラインイベント“GlobalNet Workshop”(GNW)を開催しておりましたが,昨年3月からは留学生及び日本人学生を対象にした英語による対面のポスター発表会として,大会時期に合わせて年2回開催しております.まとまった研究成果がなくとも研究構想を発表でき,大学の垣根を越えた留学生・日本人学生のネットワーク形成を期待しています.本年3月に東京都市大学で開催された第5回GNWは非常に盛況でした.詳細は本号中の開催報告を御覧頂きたいのですが,英語での発表・議論に躊躇することなく参加できる発表会を実施することは,学会の国際化を内部から促進する試みと言えます.将来的には,独立したイベントにとどまらず,大会本体や研究会などへもその動きが広がることを期待しています.

 留学生が本会への帰属意識を高め,卒業後も日本国内だけでなく母国や第三国において本会のコミュニティの一員として活動してくれることが,本会の(再)国際化につながるものと期待しています.

 I was very pleased to see many international and Japanese students gathered at the IEICE GlobalNet Workshop held at Tokyo City University in March. Currently, opportunites to present and discuss in English within IEICE are quite limited, with the exception of international conferences. I hope this workshop will help all of you to network both within and beyond Japan. In the future, I wish we can provide more opportunities for English presentations and discussions, which will further contribute to the internationalization of IEICE.

 If you have any opinions or proposals regarding the GlobalNet Workshop, please do not hesitate to share them with the IEICE International Committee.


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