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宇宙で使っても壊れないハードウェア開発の最前線
編集チームリーダー 庄司雄哉
新たな宇宙ビジネスを目指して民生ロケットや小形衛星が打ち上げられ,SpaceX社のStarlinkをはじめとする非地上系ネットワーク(NTN: Non-Terrestrial Network)の研究開発が加速しています.衛星間をつなぐ無線通信・光通信技術,発電・送電技術,無重力を生かした製薬開発など新しい技術開発とその応用が期待されています.一方,一旦宇宙に配備された機器はそう簡単に点検や修理ができないため,厳しい宇宙環境でも壊れない高信頼性は欠かせません.本小特集「宇宙で使っても壊れないハードウェア開発の最前線」は,宇宙環境で用いられるハードウェアの信頼性を担保するための研究開発の動向について,第一線で活躍されている研究者の方々に解説頂く企画です.本小特集が宇宙用ハードウェアを研究・開発されております研究者・技術者の一助となれば幸いです.
1章「宇宙用部品に求められる信頼性と宇宙用MPUの開発」では,宇宙航空研究開発機構(JAXA)の土屋佑太様らより,宇宙用マルチプロセッサユニット(MPU)の開発を解説頂きます.前半では放射線,衝撃,温度といった部品に悪影響を及ぼす宇宙ならではの環境変化とそれに対する信頼性について概説頂き,後半では宇宙用MPU: SOISOC4を例に,半導体チップや回路設計から実装技術まで「高性能・高機能」と「高信頼性」を両立するための技術開発を御紹介頂きます.
2章「宇宙機へのニューロモーフィック技術の適用と信頼性」では,同じくJAXAの福田盛介様らより,スパイキングニューラルネットワーク(SNN)に代表される,ニューロモーフィックなコンピューティングを宇宙機に適用することを目指した研究例を解説頂きます.宇宙機の月面着陸においては,機械学習による画像認識を用いて自律的な動作が求められます.そうした低レイテンシで高精度の画像処理を可能にする演算処理としてのSNNのハードウェア実装やその放射線エラーによる影響など信頼性向上に向けた技術開発を紹介頂きます.
3章「先進民生部品による高性能・高信頼衛星機器の開発」では,三菱電機の矢島雄三様らから,民生部品を活用した衛星機器の開発動向について解説頂きます.衛星情報を利用したサービスの多様化に伴い,衛星には多機能高精度な機器が必要となる一方で,高信頼性も求められています.高価な宇宙用部品ではなく民生部品(COTS部品)を利用する際に要求される信頼性や環境条件などを紹介頂きます.
4章「超小形衛星搭載に向けた耐放射線無線機」では,東京科学大学の白根篤史様らより,宇宙環境における高放射線耐性の無線ICの研究開発について解説頂きます.フェイズドアレー無線機の開発を例に,放射線耐性を高めるためのデバイス選定,回路設計,モニタリングを含むシステム構築を紹介頂きます.
5章「観測ロケットによる電離圏中の電界計測」では,富山県立大学の石坂圭吾様らから,観測ロケットによる電離圏内の電界観測を行うための電界観測装置について解説頂きます.高度60kmから始まる電離圏において太陽活動による電界の乱れは地上の電波通信に大きく影響を与えます.そうした物理現象を観測し解明するため,アンテナブームを用いた測定原理及び観測機器,観測ロケット実験について紹介頂きます.
最後に,御多忙の中,執筆に御尽力頂いた執筆者の皆様に深く感謝申し上げます.また,小特集編集チーム並びに学会事務局の皆様には本小特集の企画・提案から校閲・編集作業に多大な御協力を頂きました.この場をお借りして御礼申し上げます.
小特集編集チーム
庄司 雄哉 荒生 肇 大寺 康夫 風間 拓志 甚野 裕明 藤井 剛 吉田 知也 和田 平
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