ユニセフが2021年6月に発表した報告書によると,日本は「育児休業制度」で世界1位に選ばれた.父親が取得できる育休期間の長さや,取得率は依然として低いものの改善に向けた取組みが進んでいる点などが評価されている.この“世界1位”という結果は,特に大学において研究と子育ての両立が難しい現状を考えると,やや実感と異なる印象を受けるかもしれない.しかし,東北大学,名古屋大学,そして東京都立大学では,研究と育児の両立を支援する充実したサポート体制が整っている.「研究も育児もあきらめない」―その姿勢を支えるこれらの取組みは,子育て中の研究者にとって大いに参考となるものであろう.

大学における子育て・保育支援
Childcare and Parenting Support at Universities
Abstract
キーワード:子の出張帯同費,男女共同参画,ダイバーシティ推進,子育て・保育支援
1. 東京都立大学の子育て支援の取組み
1.1. ダイバーシティ推進施策全体の概要について
東京都立大学ダイバーシティ推進室は,性別,障がいの有無,文化的相違などにかかわらず,多様な人々が大学のあらゆる場における活動に同様に参加し,等しく尊重される環境を作ることを目的として,2011年9月に開室した.「男女共同参画の推進」,「障がいのある構成員支援」,文化的多様性やLGBTQ+等「多様性を踏まえた構成員支援」の3点を取組みの柱とする「ダイバーシティ推進基本方針」を定め,それに基づいて様々な制度の整備や理解啓発,相談・支援体制の構築などを進めている.
子育て支援に関する取組みとしては,南大沢キャンパス付近で一時保育施設「都立大KIDS」を運営しているほか,出産・育児・介護のために研究時間を確保することが難しい研究者を対象に,研究や事務を支援するスタッフを雇用する人件費の一部を支援する「ライフ・ワーク・バランス実現のための研究支援制度」を運用している.そのほか,男女共同参画の推進に関する取組みとして,キャリアカウンセラーによる働き方を含めた専門相談,女性研究者の裾野拡大を意図したロールモデル集の作成などを行っている.
1.2. 一時保育施設「都立大KIDS」について
(1) 概要と開所までの経緯
東京都立大学の一時保育施設「都立大KIDS」は,非常勤を含む教員,職員,及び学生が利用することができる.生後57日から小学校就学前の子どもが保育の対象で,1日当りの保育上限人数は5名となっている.基本的に月曜日~金曜日の8時10分から19時に開所しているが,土日・祝日に大学の授業や入試,学校行事等が行われる場合には,必要に応じて開所している.
ここでは,開所に至る経緯を簡単に紹介する.まず,2012年1月に教職員を対象とした「ワーク・ライフ・バランスに関するニーズ調査」を行った.学内保育所の整備については,「必要」若しくは「どちらかと言えば必要」との回答が72.6%,学内保育所に望むサービスについては,「必要な時に利用する一時保育」と「常時保育」とがほぼ同じ割合で拮抗した結果が得られた.
これらの結果を受け,2012年度に保育環境整備検討ワーキンググループにて検討が重ねられた.保育施設の学内での設置を念頭に,都認証保育所,学内保育所,一時保育施設の3パターンでメリット・デメリットを検討するとともに,他大学の状況調査を行った.その結果,費用や開設までにかかる期間を考慮して,一時保育施設を開設する方向性が定められた.

