
センシングと通信の融合が創る未来
──進化するISAC技術の潮流と展望──
小特集編集にあたって
編集チームリーダー
ISAC(Integrated Sensing and Communication)は,無線通信とセンシングを同一の電波・装置・波形で同時に実現する技術であり,無線通信とセンシングの機能統合により両者の性能を拡張する.具体的には,ハードウェアや周波数などのリソースを無線通信とセンシングで共用して利用効率を高めるだけでなく,センシング結果に基づき無線通信ネットワークの性能を向上し(Sensing Assisted Network),更に交通支援や人流分析などの分野で無線通信システムを活用した新しいセンシングサービスを提供する(Network as a Sensor).ISACは次世代通信システムである6Gの標準化規格において検討が進められており,今後の情報通信において欠かすことのできない技術領域になると考えられる.
本小特集では,アカデミアとインダストリの双方からの観点で,ISACの現状と今後の展望について解説する.本小特集の第1章から第3章では,学術界に所属する著者の方からISACに関する先端研究を紹介頂き,それに伴う技術的課題と解決策を洞察する.また,第4章と第5章では産業界に所属する著者の方から,ISACの実用化に向けた取組みについて議論頂く.
第1章では,ISACにおける根本課題である「通信とセンシングを両立する波形設計」に対し,通信変調波形とレーダー波形の統合という観点から目標と要件を整理する.具体的には,レーダー由来の遅延─ドップラー領域において通信変調波形を設計する上での課題を示し,その課題解決に向けて直交遅延ドップラー分割多重(ODDM)変調が果たす役割について解説する.
第2章では,家庭・オフィスでのISAC活用を想定した通信ベースセンシングの課題と利点を,Wi-Fi機器によるヒトセンシングの事例から解説する.Wi-Fiセンシングでは受信信号の位相取得が困難という課題に対し,電力応答の活用により高精度センシングを実現し,IoT家電における省エネ制御の高度化に寄与している.
第3章では,Beyond 5Gで期待されるISACに向け,「エッジモバイルコア統合型制御方式」を解説する.交通支援をユースケースに,自転車の位置センシング手法とセンシング情報の統合方式を概説し,処理をエッジ/クラウドで柔軟分担することで通信品質とサービス品質の両立を狙うアーキテクチャ設計を説明する.
第4章は,通信事業者の観点から,通信インフラにセンシング機能を統合するISACと,通信とAIの統合に向けて開発されているAI-RANの関連性について説明する.更にISACに対するAI適用に向けた研究開発の取組みとその結果について紹介する.
第5章では,6Gで注目されるISACの実例として,商用運用中の4G基地局電波から伝搬情報を取得し,深層学習で受信機周辺の人流を推定する無線センシングシステムを紹介する.大学での実証実験により商用電波センシングの有効性を示し,今後の展望を議論する.
最後に,御多忙の中,執筆を御快諾頂いた著者の皆様に心から感謝申し上げます.また,企画立案から編集作業まで御協力頂いた編集チーム,編集委員の皆様,並びに学会事務局の皆様にも,この場をお借りして御礼申し上げます.小特集編集チーム
山之内慎吾 吉間 聡 保前 俊稀 小河原健生 吉井 一駿 中村 光貴 久野 伸晃 鈴木 晃人 青山 哲也 宮下 真行 片田 寛志 平賀 健 中川 雅弘

