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タイトル1.

ISACに向けた遅延ドップラー領域波形設計のチャレンジと課題

Challenges and Issues in Delay-Doppler Domain Waveform Design for ISAC

林 海

林 海 正員 大阪公立大学工学研究科電気電子系専攻

Hai LIN, Member (Graduate School of Engineering, Osaka Metropolitan University, Sakai–shi, 599–8531 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.109 No.4 pp.271–275 2026年4月

© 2026 電子情報通信学会

通信とセンシングを両立させる波形の設計は,Integrated Sensing and Communications(ISAC)における根本的な課題の一つであり,変調波形とレーダー波形の統合が有力な解決策とされている.本稿では,まず両波形の特徴とISAC波形設計における目標を議論する.次に,レーダー分野に由来するdelay-Doppler(DD)領域における変調波形設計上のチャレンジを明らかにし,Orthogonal Delay-Doppler Division Multiplexing(ODDM)変調の仕組みを解説する.最後に,DD領域における変調波形とレーダー波形の結合の妥当性を考察し,ISACにおけるDD領域変調に関する今後の課題を示す.

キーワード:ISAC,デジタル変調波形,DD領域,ODDM,DDOP

1. ま え が き

センシングと通信を融合するIntegrated Sensing and Communications(ISAC)は,スペクトル効率の向上に加え,モビリティ支援などの新たな応用を可能にする次世代無線通信システムの中核技術として注目されている(1).両機能を同時に実現するために,通信の変調波形をセンシングにも兼用することが鍵となる.通信はチャネルの影響を抑制して忠実な伝送を目指すのに対し,センシングはチャネルによる波形変化を積極的に利用して,伝搬環境を推定・認識する.したがって,両者の目標は本質的に対立しており,ISACには適切な変調波形が必要である.

現行の4G/5Gで用いられるOrthogonal Frequency Division Multiplexing(OFDM,直交周波数分割多重)変調は時不変チャネルを前提に設計されており,ISACの主要シナリオである移動環境における時変チャネルでは通信品質の劣化やセンシング精度の低下を招く.近年,レーダー分野に由来するDelay-Doppler(DD,遅延ドップラー)領域での変調設計が考えられ,Orthogonal Time Frequency Space(OTFS,直交時間周波数空間)変調(2)とOrthogonal Delay-Doppler Division Multiplexing(ODDM(注1),直交遅延ドップラー分割多重)変調(3)が提案された.DD領域は,信号の遅延とドップラー偏移を二次元で表し,ターゲットの距離と速度を推定するための基礎的な表現である.そのため,DD領域変調はレーダー波形と通信変調波形の統合を可能にし(4),ISACに適した変調方式として関心を集めている.

その中,OTFS方式はDD領域での信号配置を考慮するものの,波形においてはOFDMを利用するため,本質上従来のOFDM方式をベースにしたPrecoded OFDMである(5).一方,ODDM方式は初のDD領域Multi-Carrier(MC)変調として,DD分解能に対応するDelay-Doppler Domain Orthogonal Pulse(DDOP,DD領域直交パルス)を活用し,高速移動環境でもロバスト性を発揮する.

本稿では,まずレーダー波形と変調波形それぞれの特徴及びISAC波形設計の目標を議論する.続いて,DD領域における変調波形設計上のチャレンジを取り上げ,ODDM変調の構成とDDOPの本質を解説する.最後に,DD領域における変調波形とレーダー波形の結合の妥当性を考察し,ISACに向けたDD領域変調波形に関する今後の課題を示す.


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