
秒の再定義における二つの選択肢を統一的に理解する方法を確立
──再定義に向けて議論が加速することに期待──
情報通信研究機構はパリ天文台と共同で,複数の原子遷移周波数を用いて秒を定義する方法について,グラフを利用した解釈が理解を大きく促進することを見いだし,報告した.この解釈法により,従来の単一遷移による定義方法との共通点や相違点が明確になり,複数遷移による定義の理解が進まなかったために膠着していた秒の再定義に向けた議論が再び動き出した.
現在の1秒は,セシウム原子のマイクロ波遷移の周波数を9,192,631,770 Hzとすることで定義されている.しかし,光格子時計に代表される光学遷移による周波数標準の研究が近年急速に進展したため,定義をマイクロ波遷移から光学遷移へ改める(再定義する)ことが議論されている.
秒の再定義は2019年頃までは「どの原子のどの光学遷移に変更するか」という観点で議論されてきた.しかし,多数の原子遷移が同程度の性能を示しており,一つに絞ることが難しいことが認識されるようになった.そこで,複数の遷移を用いて定義することも可能ではないかという議論が生まれた.ただし,この提案は数式のみで説明されていたため,専門家の間でも理解が進みにくかった.
標準となりうる多様な原子遷移が存在する状況では,周波数そのものではなく,周波数間の比率は秒の定義に依らず自然が決めている.したがって,相対的な比率関係が既に決まっている状況で周波数そのものを決めるには,一つの比例係数を定めればよいとも言える.実際,現在はセシウム原子の遷移周波数が特定の値になるよう比例係数を決めてきた.

