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Vol.109 No.5 (2026/5) 目次へ

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期待される集合知コミュニティとしての電子情報通信学会

IEICE as a Promising Community of Collective Intelligence

監事 荒川 薫

 14年ぶりに電子情報通信学会の役員になりましたが,この間の時代の変化の大きさを改めて実感しております.かつて電子情報通信学会は3万人を超える会員を擁した大規模な学会であり,周辺のアジア諸国からも多くの論文投稿がありました.しかし,現在では会員数は約2万人となり,特に海外会員は,かつて3,000人を超えていたものが,現在は700人ほどにまで減少しています.

 一方で,この間の電子情報通信技術の進歩には目覚ましいものがあります.今日では,誰もが世界の情報を瞬時に取得できるようになりました.しかし,これに伴い,学術論文の発表の場としては国際的に権威のある学会が主流となりました.ある意味では,本会が発展させてきた技術が,本会を取り巻く環境を大きく変化させたとも言えるかもしれません.

 しかし,このような状況の中にあっても,電子情報通信学会には大きな強みがあります.それは本会が幅広い分野をカバーしている総合型学会である点です.御存じのように,本会は,基礎・境界,通信,エレクトロニクス,情報・システム,NOLTA,ヒューマンコミュニケーショングループといった多様なソサイエティ及びグループから構成され,各ソサイエティやグループにおいても数多くの研究会が設置されています.こうした多様な組織が互いにどのように関わり合うかが,今後の学会の発展にとって重要な鍵になると考えます.

 学会には,特定の領域に特化した特化型学会と複数の領域をカバーする総合型学会があります.特化型学会では,会員が共通の研究課題を深く掘り下げることができるので,全員が共通の関心の下で活動することが可能です.その一方で,電子情報通信学会のような総合型学会では,扱う領域が広いため,全会員の関心を共通のテーマに引き付けることは難しいです.しかし,本会を単に複数の研究集団の集合体として考えるのではなく,多様な分野の専門家が,互いの知識や視点を持ち寄ることで「集合知」を生み出すコミュニティとして捉えるならば,本会は大きな価値を生み出すと言えます.

 同じ背景や考え方を持つ人々だけで議論しても,得られる発想や解決策には限界があります.しかし,異なる背景や視点を持つ人たちが議論に加わることで,新しい発想やより良い解決策が生まれることが期待されます.また,自分の専門分野以外の研究に触れることは,自身の研究に新たなヒントを与えることにもつながります.このように,多様な分野を包含する電子情報通信学会はその多様性を生かすことによって,新たな研究の展開を生み出す場となり得るのです.例えば,AIの研究では,日本は米国や中国に対して大きく後れをとっていると言われていますが,AIの普及に伴って生じる通信トラフィック,電力消費,生成データの信頼性などの問題はAIの専門家だけで解決できるものではありません.通信,デバイス,情報理論など様々な分野の研究者が関わることで,新しい解決方法が見えてきます.

 そして,このような集合知を生み出すためには,人と人とをつなぐコミュニティとしての学会の役割が不可欠です.研究は,単にインターネットから情報を収集しているだけでは進みません.研究者・技術者が互いに議論を重ね,様々な視点から意見を交換することによって,新しいアイデアが生まれることが期待されます.

 電子情報通信学会は,このような大きな可能性を有する学会です.会員の皆様には,ソサイエティやグループの枠を越え,積極的に学会活動に御参加頂き,多様な分野の研究者・技術者との交流を深めて頂ければと思います.


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