電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.109 No.7 (2026/7) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


タイトル

(写真:敬称略)

 本会選奨規程第29条(電子工学及び情報通信並びに関連分野における教育実践(学会,教育機関,企業等での教育の実践)において顕著な成果を挙げ,当該分野の教育の発展に寄与した個人)に基づき,下記の3名を選び贈呈した.


コンピュータグラフィックス・可視化技術教育の振興および標準化

著者

受賞者 藤代一成


 藤代一成君は,1985年に筑波大学大学院博士課程工学研究科を修士号取得退学し,東京大学理学部助手,1989年から筑波大学講師,1991年からお茶の水女子大学助教授,同教授,2004年東北大学教授を経て,2009年に慶應義塾大学教授に就任しました.この間,米国ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校客員教授などを務め,国際的な視点から教育・研究活動を展開してきました.

 同君は,コンピュータグラフィックス(CG)及び可視化技術を専門としています.特に自身の専門知見をベースとし,その応用としてコンピュータサイエンスの国際標準カリキュラム(CS2023)に準拠した国内教育体系の確立と,我が国における人材育成の質の向上に多大なる貢献を果たしてきました.「電子情報通信学会100年史」においても映像メディア節の執筆を担当するなど,学問的体系の整理と啓発活動に積極的に取り組んできました.

 同君は,画像情報教育振興協会(CG-ARTS)において長年にわたり評議員・教育推進委員長を務め,1999年からは現行のCG標準教育カリキュラム策定において中心的役割を果たしました.その成果の集大成として,編集長を務めた教科書『コンピュータグラフィックス』及び『ビジュアル情報処理』を出版し,CG分野の啓発に極めて大きな貢献を果たしてきました.これらの書籍には,幾何モデリングからレンダリング,画像処理に至るまで広範な内容が網羅されており,様々な分野の研究者・技術者への教育効果は計り知れません.本著は新旧版合わせて累計発行部数18万冊を超え,発刊以来20年間にわたり全国の大学・専門学校・企業で採用される不動の定番書となっています.

 更に教育実践においても,慶應義塾大学を同検定認定校として先導し,14年連続で優秀校に認定されるとともに,延べ451名のエキスパート合格者を輩出するなど,卓越した指導実績を挙げています.これらの功績により,2021年には日本人唯一の「IEEE Visualization Academy」会員に推戴され,2025年には慶應義塾大学『義塾賞』を受賞するなど,国内外で極めて高い評価を得ています.

 以上から,同君のコンピュータグラフィックス・可視化技術教育の振興および標準化に対する貢献は本会の教育優秀賞を受賞するにふさわしいと考え,ここに推薦します.


数理・情報分野の教科書執筆とデータサイエンス教育の全学・高大社展開

著者

受賞者 皆本晃弥


 皆本晃弥君は,九州大学において2000年に博士(数理学)の学位を取得後,2000年4月に佐賀大学に着任し,現在は教授として教育研究に従事しています.2019年から大学院理工学研究科データサイエンスコース主任,2020年5月から2025年3月まで全学教育機構数理・データサイエンス教育推進室長を務め,全学的な数理・データサイエンス・AI教育(MDASH)を統括しました.

 同君は,社会の急速なデジタル化と高度情報専門人材育成の必要性を早くから認識し,2016年度からデータサイエンス教育に取り組んできました.MDASHの全学展開を推進するとともに,理工学部・理工学研究科におけるデータサイエンスコースの設置に中心的役割を果たしました.また,佐賀大学におけるMDASH教育プログラムの開発を主導し,同プログラムは文部科学省の認定制度において「リテラシーレベルプラス」及び「応用基礎レベルプラス」の両方に選定されました.更に,令和5年度「大学・高専機能強化支援事業」への申請に貢献し,同事業に選定されるなど,定員増を伴う教育体制の強化を実現し,将来のデジタル人材育成基盤の構築に辣腕を振るっています.

 特筆すべきは,数理・情報分野における継続的な教科書執筆です.過去10年間に8冊を出版し,全国の大学で広く採用されています.『C言語による数値計算入門[第2版]』は20年にわたり読み継がれるロングセラーであり,『Pythonによる数理・データサイエンス・AI』『スッキリわかる数理・データサイエンス・AI』では,機械学習の基礎から深層学習までを体系的に解説し,理論と実装を架橋する構成をとっています.数理的背景を重視し,アルゴリズムをフルスクラッチで実装できる水準まで丁寧に記述した著作群は,電子情報通信分野の基礎教育の充実に大きく寄与しています.

 加えて,高大接続及び社会人教育にも取り組み,高校へのデータサイエンス科目の提供や社会人向けDXリスキルプログラムの実施など,多層的な学習機会を創出しています.

 以上の功績は,本会教育優秀賞にふさわしいものと確信し,ここに強く推薦致します.


システム内製化技術を中心としたディジタルトランスフォーメーション推進人材育成プログラムの開発

著者

受賞者 八重樫理人


 八重樫理人君は,香川大学情報化推進統合拠点DX推進研究センター長として,ローコード・ノーコード等を用いた「システム内製化技術」を核に,ディジタルトランスフォーメーション(DX)推進人材の育成と大学業務の変革を一体で進める先駆的取組みを主導してきました.同君の取組みは教育と実装を結ぶ点で卓越しています.

 IPA「DX動向2024」がDX推進に必要な技術としてシステム内製化を挙げる中,2021年から組織的に内製開発を推進し,2026年3月時点で150を超える業務システムを開発し,学内で実利用に供しています.代表例の落とし物管理システム「カダミッケ」は香川大学にとどまらず大阪教育大学・島根大学等へ展開され,各組織が自立的に運用できる仕組みとして定着しました.加えて,香川大学の内製システムを公開するソリューションカタログサイトはアクセス130,000超,ダウンロード3,700超に達し,知見の共有と横展開を促しています.

 教育面では,システム開発とデータ分析・可視化を通じて学ぶ「内製開発/データ分析ハンズオン」を整備し,Word・Excel程度の業務経験があれば受講可能な敷居の低さを実現しました.本ハンズオンは学内のみならず他大学・企業・自治体の要請に応え,これまで64回,延べ2,804人が受講しています.その結果,香川大学では非情報系職員が285の業務システム(入構申請,問い合わせチャットボット等)を内製開発するまでに成長し,高等教育機関におけるDX推進モデルを提示しました.更に,これら実践は電子教科書『業務システム内製開発 入門編』『業務システム内製開発 応用編』として体系化され,再現可能な教育資源として社会に還元されています.

 同君はこれらの取組みを牽引し,大学ICT推進協議会のCIO向け講演会をはじめ招待講演は約100件に及び,学会誌・広報誌への寄稿やメディア取材を通じて先進事例を広く発信してきました.情報系人材不足が社会課題となる今日,同君の実践は現場で使えるDX推進人材を継続的に育てる点で波及効果が大きいと言えます.以上のように,同君の功績は本会教育優秀賞を受賞するにふさわしいと確信し,ここに推薦します.



続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。