
究極の周波数有効利用を目指す自動周波数調整(AFC)システム
──新たな周波数共用の自動化の試み──
Automated Frequency Coordination (AFC) System Aiming at Ultimate Spectrum Efficiency: A New Approach for Automated Frequency Sharing

様々なワイヤレスシステムの導入に必要となる周波数スペクトルの確保は,近年ますます重要となっている.しかし,現状では,ほぼすべての周波数スペクトルは既に割り当て済みであり,新たなシステムの迅速な導入のためには,既存システムとの周波数共用が不可欠となってきている.本稿では,近年,無線LANにおいて世界的に導入・検討が進められている,新たな周波数共用の自動化を実現する「自動周波数調整(AFC)システム」について解説する.
キーワード:自動周波数調整,AFCシステム,データベース,周波数共用
1. は じ め に
電波の周波数は土地と同じ性質を持つ有限な資源であり,電波法第一条に述べられているように「電波の公平且つ能率的な利用を確保する」ことは,全ての電波利用システムにおいて極めて重要である.また,電波は通信,レーダ等の利用用途に応じて適した周波数があり,どの電波利用システムにどの周波数を割り当てるかは,世界的には無線通信規則(RR:Radio Regulation),日本国内では電波法により規定されている.現状では,ほぼ全ての周波数は何らかのシステムに割り当て済みで,ある電波利用システムの周波数需要が急増しても,即座に周波数割り当ての追加や変更はできず,既存システムの他周波数帯への移行などが伴うと,周波数割り当ての変更には5~10年程度の長い時間が必要となる.
無線通信の分野では,近年,特に利用者数の増加が著しい携帯電話や無線LANの更なる伝送速度の高速化,システムの大容量化が求められている.無線通信システムの高速・大容量化には,①スペクトル利用効率(bit/s/Hz)の向上,②ミリ波などの高周波数帯の開拓による帯域拡大の二つのアプローチがある.①では,例えば2.4/5/6GHz帯を用いるIEEE802.11beではMIMO-OFDM(Multiple Input Multiple Output)技術を用いて,4,096QAMの多値変調と MU(Multi User)-MIMOが規格化されているが,更なるスペクトル利用効率の向上は技術的に難しくなりつつある.一方,②では,ミリ波等の高い周波数は,広帯域を利用できる利点はあるが,地物や人の遮蔽による減衰が大きく,端末が移動するモバイル通信には適さないとされてきた.実際,現状をみると,無線LANでは7GHz以上の広帯域を利用可能な60GHz帯を用いるIEEE802.11ad/ayの標準規格が策定されたが,広く利用されているとは言い難い.また,第5世代移動通信(5G)の28GHz帯も利用は限定的である.このような高い周波数帯をモバイル通信で本格的に利用するには,高周波数帯の欠点を克服するための更なる技術開発が必要と言える.
このような背景から,近年,モバイル通信に適した周波数スペクトルを,周波数共用により確保するアプローチが改めて注目されている.周波数共用とは複数の異なる無線システムが同じ周波数帯域を利用することで,これまでも様々な無線システムで行われてきており,相互に相手のシステムに対して「有害な干渉(HarmfulInterference)」とならない条件で同一周波数帯を利用する.この周波数共用の条件は,与干渉システムと被干渉システムの場所やパラメータ等の条件に依存し,これまでは電波利用システム間の干渉計算のためのモデルを設定し,干渉による回線品質の劣化量を机上計算で評価し,必要に応じて実証実験による検証を行い,手動で周波数共用条件を検討してきた.これに対して,近年,運用条件をデータベースに登録して干渉計算を自動化し,時間的・空間的な周波数共用条件を算出して周波数共用を行う,TVホワイトスペースや2.3GHz帯のセルラダイナミック周波数共用システムが実用化されている(1).しかし,実際の運用では,利用場所等の設定や送信開始・停波などの操作は人手を介して行われている.

