
整合回路の基礎[Ⅱ]
――型整合回路(1)――
An Introduction to Matching Circuit Fundamentals[Ⅱ]
-Type Matching Circuit (1)
1. は じ め に
前回は整合回路(用語1)の基本であるL型整合回路(LC/CL)について解説した(1).今回は型整合回路について紹介する.
型整合回路の特徴として,複素インピーダンスを含む広い負荷条件に対応できる点が挙げられる.このため,多くの多段増幅回路において段間整合回路として用いられている.一方で注意すべき点として,例えば終端インピーダンスが純抵抗の場合には,素子数が多いにもかかわらず,必ずしもL型整合回路より整合帯域が広くならない場合がある.また,
型整合回路の代表的な応用例として,伝送線路(用語2)の等価回路としての利用が挙げられる.伝送線路,特に
伝送線路を用いた回路は有用であることが多いが(2),回路寸法が長くなるため,実装上の制約から適用が困難な場合も少なくない.このような場合,
型整合回路で等価的に置き換える手法が広く用いられている.本稿では,このような
型整合回路の基本特性について解説し,次回に応用例を紹介する.
2.
型整合回路の整合範囲
図1に二つの代表的な型整合回路の構成を示す.ここでは信号源抵抗を
,負荷抵抗を
とする.
型整合回路には,シャント素子(用語3)を容量,スルー素子(用語4)をインダクタで構成したCLC型と,シャント素子をインダクタ,スルー素子を容量で構成したLCL型の2種類がある.

図2はL型LC/CL整合回路が,単一周波数でスミスチャート中心に位置する基準インピーダンスと整合可能な信号源インピーダンス
の範囲を示したものである(3).(a)はLC整合回路の場合であり,薄青色でハッチングされた領域内にある複素インピーダンス
は
と整合を取ることが可能である.

(b)は入出力を反転させた場合のLC整合回路の場合であり,薄いマゼンダ色でハッチングされた領域内にあるは
と整合可能である.この領域は(a)の範囲を補完している.(c)はCL整合回路の場合であり,薄いマゼンダ色でハッチングされた領域内の
は
と整合可能である.(d)は入出力を反転させた場合のCL整合回路の場合であり,薄青色でハッチングされた領域内の
は
と整合可能である.この領域は(c)の範囲を補完している.このようにLC/CL整合回路は単一の整合回路で任意の
を
に整合することはできないが,接続方向を反転することで全域をカバーすることができる.これに対して
型整合回路では,単一周波数においては,両端にシャント素子を配置することで(e)に示すように一つの整合回路で任意の複素インピーダンスを基準インピーダンスに整合させることができる.整合の取れるインピーダンスの自由度が高いため,例えば多段増幅器の段間整合回路等に広く適用される(4).

