
情報通信システムを支えるセンシング技術
Sensing Technologies: Unsung Heroes Supporting Information and Communication Systems

多くの情報通信システムは,様々なデータを取得した上でそのデータに基づいた動作を行う.このようなデータ取得を支えるのは「センシング技術」である.温度や湿度,照度などのセンサデータはセンサデバイスから取得できるが,「ユーザが今何をしているか」のような情報が必要となる場面も多く存在する.本稿では,センサデバイスで直接取得できないこのような情報を取得するセンシング技術について解説する.情報通信システムを支えるセンシングの役割について述べた上で,実空間におけるセンシング技術に焦点を当てて解説する.
キーワード:無線センシング,音響センシング,行動認識,空間認識,参加型センシング
1. は じ め に
情報通信技術の発展とともに,様々な情報通信システムの利用が進んでいる.以下の例のように,日常生活においても我々は当たり前のように多くの情報通信システムを利用している.
朝,スマートウォッチが睡眠の浅くなったタイミングを検知して目覚ましを鳴らしたことで,私は起床した.朝食を済ませ,スマートフォンで天気予報を確認し,バスに乗って通勤するために自宅を出ようとしたところで,バスが5分遅れているとスマートウォッチに通知が来たため,出発を少し遅らせた.バスに乗ったら,スマートフォンで今日のニュース記事に目を通した.ニュース記事はこれまでに閲覧したニュース記事の内容に基づいて優先付けされて並べられており,限られた時間で自分に必要な情報を得ることができる.
多くの情報通信システムでは,必要なデータを得るためのセンシングが欠かせない.上述の例で言えば,目覚ましを鳴らすためにスマートウォッチは「睡眠の浅くなったタイミング」をセンシングする必要があり,バスの遅れを通知するためにバスの位置情報が必要となる.
センシングによって得られるデータには様々なものがあるが,筆者は「センサデバイスから直接得られるデータであるか」によって,一次センサデータと二次センサデータに大別している.温度や湿度,照度などの物理データはセンサデバイスから直接得られるデータであり,一次センサデータと呼んでいる.これに対し,複数の場所で取得した一次センサデータを解析したり,複数種類の一次センサデータを組み合わせたりすれば,センサデバイスでは直接取得できない「誰が何をしているか」のような情報を取得することが可能となる.筆者は,このようなデータを二次センサデータと呼び,センサデータの一つであると位置付けている.
本稿では,二次センサデータを取得するセンシング技術について解説する.実空間の情報を取得する技術に焦点を当て,人及び人の行動に関連するセンシングと,空間情報のセンシングにそれぞれに分けて,主に筆者らの研究の実例を交えて解説する.まず,2.で情報通信システムにおけるセンシング技術について解説し,二次センサデータの重要性について述べる.3.,4.では人・人の行動センシング技術,空間情報センシング技術をそれぞれ解説し,5.でまとめとする.

