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Vol.109 No.8 (2026/8) 目次へ

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タイトル

 * 本小特集で扱うエッジコンピューティングは,計算資源を利用者や機器,センサの近くに配置し,通信の往復時間を短縮することで,より低遅延な応答を実現しようとする技術である.

 * しかし,エッジコンピューティングが注目される以前から,私たちはオンラインゲームを普通に楽しんできた.オンラインゲームでは,数十ミリ秒程度の通信遅延は珍しくない.それでも多くのプレイヤーは,画面の向こうの相手とリアルタイムに対戦していると感じながらプレイしている.その理由は,遅延があることを前提に,それを目立たなくする工夫をしているからである.

 * 例えばFPSでは,プレイヤーが移動キーを押したとき,サーバからの返答を待たずに,クライアント側で先にキャラクターを動かすことがある.毎回サーバの判定,例えば壁などとの衝突判定を待ってから画面を更新していては,操作のたびに通信遅延が加わり,動きが重く感じられてしまうからである.後からサーバの計算結果が届き,食い違いがあれば,その差を補正する.

 * 攻撃の判定でも,遅延を考慮した工夫が行われている.プレイヤーが画面上で相手を狙って撃ったとしても,通信遅延があるため,サーバから見ると相手は既に少し移動しているかもしれない.そこでサーバは,過去の位置履歴を参照し,発砲時刻に近い状態で当たり判定を行うことがある.比喩的に言えば,一時的に時間を巻き戻して判定しているのである.

 * しかし,現実世界はそうはいかない.遠隔操作ロボットが壁に衝突した後で,時間を巻き戻すことはできない.自動運転車が歩行者の動きを予測し損ねたとしても,起きてしまった物理的な出来事を後からなかったことにはできない.もちろん,現実世界のシステムにも予測制御や安全機構はある.しかしそれらは,事故や誤動作を未然に防ぐための工夫であり,起きてしまった物理現象を巻き戻すものではない.

 * そう考えると,ゲームは,遅延を前提として,予測と補正によって人間の体感を扱う技術である.一方,エッジコンピューティングは,遅延の影響が現実世界に直接及ぶロボットや機械のための技術でもあるのかもしれない.この対比は,「低遅延」という言葉の背後にある本質を改めて考えさせてくれる.

(編集特別幹事 鈴木晃人)


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