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Vol.109 No.8 (2026/8) 目次へ

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より善き社会に向けて

Towards a Better Society

総務理事 高橋篤司

 未来60年賞チャレンジコンテストが,36歳未満の本会会員を対象に開催されました.3月の総合大会では,一次審査を通過した8名のファイナリストによるプレゼンテーションが行われ,その結果,栄えある初回の未来60年賞は,山崎雄大氏に授与されました.5月には未来60年ビジョン会議及び授賞祝賀会が開催されました.本賞は研究成果を表彰するのではなく,情報通信の60年後の未来を開拓する力を持つ「提案」を顕彰するものです.

 初回の未来60年賞は,概要発表から締切りまで短期間でしたが,独創的ですばらしい提案がたくさんありました.本賞の目的の一つは,未来に向けて互いの成長を支え合い,受賞者同士の人的・知的ネットワークを持続的に発展させていく点にあります.次回以降,更にすばらしい提案がたくさん寄せられ,ネットワークが発展することを期待しています.初回の未来60年賞のファイナリストは8名中3名が女性でした.一次審査では,個人情報を伏せた上で,応募書類のみで審査が行われました.本会の女性会員比率は約10%です.これは,現在の電子情報通信分野の研究者・技術者・学生の女性比率を反映しているかと思います.2026年度の本会理事の女性比率は28名中2名にとどまっています.一方,ジュニア会員は約20%で,今後,女性会員比率は徐々に増えていく傾向かと思いますが,しばらく低いまま推移しそうです.

 本会の男女共同参画委員会では,学術奨励賞を受賞された女性会員など,若手や中堅の女性会員と会合を持ちました.大学や大学院進学に反対されたといった方,一方,御自身の娘さんがこの分野に進むことに不安を感じる,といった心情の方もおられました.女性の社会進出は進んでいるものの,女性がこの分野に進むことに対して,家族や周囲から陰に陽に反対される状況は,いまでもあるようです.一方で,男性でそのような圧力にさらされた方は少ないでしょう.現状では,社会には大きなバイアスが存在しています.理工学系の学部入試で女子枠を設ける大学も増えてきています.女子枠に対しては,男性側,女性側双方に反対意見も根強いかと思います.女子枠によって,従来の入試ならば合格したであろう男子の代わりに女子が合格します.しかし,受験すれば合格したであろう女子が,社会バイアスのために受験しない結果,男子が合格していたかもしれません.女子枠は,試験成績で男子に劣る女子を合格させるための手段ではありません.より善き社会を目指すため,様々な観点で多様性を確保するため,この分野が女子を求めていることを社会にアピールする取組みの一環です.社会バイアスが是正され,多様性が確保されたら,女子枠は自然となくなるでしょう.

 バイアスを適切に設定しなければ,電気回路は正しく動作しません.アンコンシャスバイアスは,効率良く物事を把握し判断するために最適化された結果でしょう.しかし,従来の社会環境で最適化されたバイアスから脱却し,将来のより善き社会につなげるために,バイアスをより適切に設定する必要があります.人の思い,感覚,常識はすぐには変わりません.より善き社会に向けた環境が整うためには世代交代が必要かもしれません.本会の103代会長に辻会長が就任しました.歴代会長は全て男性でしたので,本会の初の女性会長になります.辻会長の下皆様とともに,この分野の発展,社会の発展に寄与するために,多様性の確保に向けた様々な取組みを,本会内部に対してだけでなく,社会に対しても地道に続けていきます.皆様の御理解と御協力を是非ともよろしくお願い致します.


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