小特集 デザインイノベーション――専門や業種を超えた課題解決に向けて―― 編集にあたって

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Vol.100 No.7 (2017/7) 目次へ

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小特集

デザインイノベーション

――専門や業種を超えた課題解決に向けて――

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 洲鎌 康
サブリーダー 石田 亨

 “デザイン”という言葉に対して皆さんはどのような印象を持つでしょうか.多くの方が建築物や衣服のデザインを思い浮かべるかもしれません.しかし広義のデザインには「人々の要求を満たす事物を生み出す」という意味が込められていますので,都市,医療,社会問題まで幅広くデザインの対象となります.実際,震災復興のグランドデザイン,オリンピックのトータルデザイン,地域のコミュニティデザインなど,その対象は様々です.近年では,企業でのデザイン思考の広まりとともに,デザインという概念に,課題解決の側面があることが認識されるようになりました.

 一方,私たちの研究分野である電子情報通信技術は成熟局面に入っており,単一の技術のみで製品やサービスの差異化を図ることは困難になってきています.更に技術のオープン化が進み,誰もが最新技術を手軽に扱えるようになったため,技術を組み合わせて適用し,顧客の満足を生み出すデザイン力が求められるようになりました.

 本小特集はこのような背景を踏まえ,関心を集めているデザイン思考,大学や企業での人材育成や研究開発の取組み,地域創生や学会活動へのインパクトを紹介します.

 第1章では,総論としてデザイン思考の推進者の一人であるBarry M. KATZ氏にデザイン思考の魅力や歴史的経緯と,多様な分野におけるデザイン方法論の適用事例を紹介頂きます.シリコンバレーに端を発し世界中の企業へと急速に広がりを見せるデザイン活動が端的に解説されています.

 第2章では,大学におけるデザイン学教育の取組みを紹介します.従来の専門分野を縦軸,デザイン学を横軸とするカリキュラムの考え方と,様々な実践教育の取組みを解説します.また,京都大学デザインスクールを中心にハーバード大学,デルフト大学を含む国内外のデザイン学の教育活動を概観し,大学における横断型教育の在り方を議論します.

 第3章では企業におけるデザインへの取組み例を,異業種企業との共創活動を継続して実践しておられる角岡幹篤氏と黒瀬義敏氏に紹介して頂きます.共創によるイノベーション実現に向けたプロセスや活動を成功させるポイント,共創活動を支える仕組みについて,多くの実践事例を交えて解説して頂きます.

 第4章では少し視点を変えて,地方創生の現場における様々なイノベーション事例を,野村総合研究所の齊藤義明氏に紹介頂きます.イノベーションの中心となるリーダーの分析を通じて,イノベーターに必要なキラースキルや地域でのイノベーションの起こし方について解説頂きます.

 最後に第5章では東京大学森川博之氏から,学会で取り組むべき今後の研究開発の方向性を述べて頂きます.どうやるかではなく何をやるか,というストーリーを持った研究開発の重要性に関して事例を交えて紹介して頂きます.

 電子情報通信学会では,各ソサイエティが深い専門を培ってきましたが,一方で,ソサイエティ横断的な活動の必要性が,今まで以上に指摘されています.本小特集が,学会の今後の方向性を考えるための議論や,読者の皆様の職場での研究開発の検討にお役に立てばと思います.最後に,お忙しい中,原稿を執筆頂いた執筆者の皆様,本小特集を積極的に推進して頂いた編集チーム,学会事務局の皆様に厚く御礼申し上げます.

小特集編集チーム

 洲鎌  康  石田  亨  森川 博之  伊東  匡  高田 潤一  植松 芳彦  西島 喜明  小林 彰夫 


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