小特集 3-6 浮遊球体ドローンディスプレイ

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Vol.101 No.12 (2018/12) 目次へ

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ドローンがもたらす新しい世界 3. ドローンの活用事例

小特集 3-6

浮遊球体ドローンディスプレイ

Spherical Drone Display

山田 渉

山田 渉 正員 (株)NTTドコモ先進技術研究所

Wataru YAMADA, Member (Research Labs, NTT DOCOMO, Yokosuka-shi, 239-8536 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.12 pp.1196-1200 2018年12月


本記事の著作権は著者に帰属します.

1.概     要

 浮遊球体ドローンディスプレイは飛行して空間上の任意の場所から映像を表示することができる世界初の球体ディスプレイである.近年,無人航空機(ドローン)の低価格化や普及に伴い,ドローンを用いた映像表示技術の研究開発が盛んに行われているが,大画面かつ高解像度のディスプレイをドローンに搭載することは重量や航空力学上の問題により困難であった.そこで本技術では残像効果によってディスプレイを表示する技術を応用するとともに,LEDの回転の反作用を打ち消すように制御することで,空中を飛び回る球形のディスプレイを実現した.本稿ではドローンを用いた映像表示技術の事例を紹介するとともに,浮遊球体ドローンディスプレイについて解説をする.

2.ま え が き

 SFの世界では空中に映像を表示する魔法のような技術が古くから描かれてきた.例えば,映画「スター・ウォーズ」(1)ではレイア姫の三次元映像が空中に投影される技術が描かれ,その未来的な様子に多くの人が魅了された.現実の世界でもこのような空中映像が表示可能な技術の実現に向けて様々な技術の検討がされてきた.幾つかの例を挙げると,現実の風景とCG(Computer Graphics)とを合成した映像を表示する拡張現実感(AR: Augmented Reality)と呼ばれる技術(2)や,音響力場や磁力によって小さな粒子や金属球などの物体を浮遊させ映像を投影する技術(3),(4),更にはレーザ光を用いて空気中にプラズマを発生させて映像を表示する技術(5)などがある.その中でも近年,注目を集めているのが,ドローンにディスプレイやスクリーン,LEDなどを搭載して空中に映像を表示する技術である.

 ドローンとは,遠隔操作や自動飛行が可能な無人航空機のことであり,2010年にParrot SA社からAR. Drone(6)が発売されて以降,安価で高性能なものが次々と市販されるようになった.2018年現在で既に簡単な構造のドローンであれば数千円程度から,GPS(Global Positioning System)や超音波センサ,カメラといった高度なセンサを搭載し精密な位置制御が可能なものであっても数万円程度から購入することができる.このような急速な低価格化と高性能化によりドローンを用いた空中に映像を表示する手法は現実的なアプローチとして盛んに研究されるようになった.ドローンを用いた空中映像表示技術には様々な手法があるが,近年最も高い注目を集めているのが高輝度LED(Light Emitting Diode)を搭載したドローンを大量に飛行させて,各ドローンをボクセル(注1)として用いることで空中に映像を表示する技術である.例えば,米国のIntel社では,2018年の平昌オリンピックで1,218台ものドローンを同時に飛行させて空中に映像を表示することに成功している(7).また中国のEhang社も同年6月に1,374台ものドローンを同時飛行させ空中映像を表示するデモンストレーションを行い,前述のIntel社の世界記録を更新した(8).更には日本のSKY MAGIC社(9)でも同様の技術の開発を進めており,同分野の競争が過熱している.


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