小特集 3. 高臨場感空間音響技術の最新動向と将来展望

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Vol.101 No.8 (2018/8) 目次へ

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高臨場感映像・音響が創り出す新たなユーザ体験の評価技術

小特集 3.

高臨場感空間音響技術の最新動向と将来展望

Trends in High-realistic Spatial Sound Technologies and Prospects for the Future

鈴木陽一 トレビーニョ ホルヘ 坂本修一

鈴木陽一 正員:フェロー 東北大学電気通信研究所人間情報システム研究部門

トレビーニョ ホルヘ 正員 東北大学電気通信研究所人間情報システム研究部門

坂本修一 正員:シニア会員 東北大学電気通信研究所人間情報システム研究部門

Yôiti SUZUKI, Fellow, Jorge TREVIÑO, Member, and Shuichi SAKAMOTO, Senior Member (Research Institute of Electrical Communication, Tohoku University, Sendai-shi, 980-8577 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.101 No.8 pp.786-792 2018年8月

©電子情報通信学会2018

abstract

 本稿では,まず音空間技術の歴史を概観する.それを踏まえ,現在の超高臨場感三次元聴覚ディスプレイ技術を到来方向再現,バイノーラル音響,音場再現・合成と,それらのハイブリッド法に分類し,最先端技術動向を示す.次に,将来の超高臨場感空間音響技術の発展の鍵としてアクティブリスニングとインタラクティブ性を提示する.更に,それらの実現に向けた今後の三次元聴覚ディスプレイ及び,それと両輪をなす音空間情報取得技術の動向と課題を示し,インタラクティブ性実現の鍵となるコンピュータグラフィックス相当の空間音響技術(シリコンミュージックホール)実現への期待を述べ,これらがもたらす将来の可能性について若干の考察を試みる.

キーワード:高臨場感音響,聴覚ディスプレイ,音場合成,頭部伝達関数,三次元音響

1.空間音響技術の発展

 人間にとっての音の重要な役割に空間情報の伝達がある.視覚と異なり聴覚は,全方位の空間情報を知覚することが可能である.また,本小特集行場次朗氏の解説にもあるように,臨場感の重要な決定要因でもある.

 本稿では,超高臨場感実現の上で映像技術とともに極めて重要な役割を果たしている空間音響技術について,これまでの発展の歩みと,現在の動向を述べ,更に将来の展望を試みたい.ではまず今に至る歩みを見ていこう.

 立体音響技術が長い歴史を持つのも,音情報が豊かな空間性を有するゆえであろう.電話と電気蓄音機の発明から僅か10数年後の1881年,パリで国際電気会議とともに開催された国際電気博覧会において,電話2回線を用いてオペラ座の舞台公演の音を両耳で聞く公開実験が行われ,大変評判を呼んだと言う.1920年代には英国や米国でAM放送2波を用いた2chステレオ音響の実証的試みが行われている.1933年にはAT&Tベル研究所がワシントンとフィラデルフィアを電話線で結び,3chステレオ音響によるフィラデルフィア管弦楽団のライブ再生実験を行った.この実験の結果の解析を受けて,ステレオ音響は2chが標準となっていく.1949年には磁気テープを用いたステレオ録音機が発表され,直後に商品化されている.1950年代には定常的なステレオ放送が実現,1958年にはステレオLPレコードも発売された.日本でもNHKによるAM 2波を用いた実験放送が始まったのは,ステレオレコード発売に先立つ1952年であった.

 1960年代から1970年代初頭に掛けては,現在の高臨場感空間音響技術につながる技術が次々と芽生えた.

 一つは多チャネル化である.1960年代にはゲッチンゲン大学第3物理学研究所において上半球に65のスピーカを均等配置したアレーが作られた(1).アナログ処理による4ch方式が提案されたのもこの頃である.その後,1990年前後には日本のゼネコン各社が多チャネルスピーカアレーを用いて,室形状から室内音響を可聴化するシステムを相次いで開発した.現在,研究用ではフランスIRCAMが347ch(2),東北大学では157ch(図1)(3)等,超多チャネルスピーカアレーによる研究が各地で進められている.また,欧米では100chを優に超えるスピーカアレーを備えた映画館が増えている.


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