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解説
環境負荷を考慮した仮想ネットワーク制御手法
Virtual Network Control Method Considering Environmental Load
A bstract
近年のネットワーク仮想化技術の進展に伴い柔軟なネットワーク制御が可能となってきており,これを活用することにより物理リソースの有効利用によるコスト削減や運用効率の向上等が期待されている.一方でカーボンニュートラルに向けた取組みが世界的に進む中,今後は環境負荷も考慮したネットワーク運用が求められる.本解説記事では環境負荷を考慮した仮想ネットワーク制御において,とりわけエネルギー単価に着目した制御手法を紹介する.
キーワード:仮想ネットワーク制御,環境負荷低減,ネットワーク安定性
IoT(Internet of Things)の普及・拡大により,ネットワークを流れるトラヒック量は増加の一途をたどっている.これらのトラヒックを処理するネットワーク機器の増大に伴い,消費電力やCO2等の環境負荷拡大が懸念される.ICT(Information and Communication Technology)産業の総消費電力は世界のエネルギー消費の10%を占めているともされ(1),カーボンニュートラルに向けた取組みが世界的に進む中でネットワーク運用における環境負荷低減は喫緊の課題である.
このような中,我々は電力を提供する電力会社ごとに電源構成比(太陽光発電や火力発電等,エネルギー源で分類した発電設備の割合)が異なるため電力に関する環境負荷パラメータ(CO2排出係数等)に差異があることに着目し,これを考慮してネットワークを制御し環境負荷低減を図る検討を進めている(2).本稿では,電源構成比の違いによって決まるパラメータとしてより身近な電気料金単価(円/kW・h)を取り扱い,電気料金を削減するネットワーク制御手法について述べる.ネットワーク制御の手法としてはネットワーク仮想化技術を活用する.ネットワーク仮想化とはネットワーク機能を汎用サーバの仮想化基盤上でソフトウェアとして実装するものである.ネットワークサービスを提供する上で通信事業者は不正アクセスを防止するFW(ファイヤウォール)や不正侵入を検知するIDS(Intrusion Detection Systems)等のミドルボックスを活用しているが,従来これらは専用のハードウェアで実装されてきた.これに対しネットワーク仮想化技術では,仮想化技術をネットワークに適用することで専用ハードウェアを新規に設置することなくソフトウェア上での設定によりネットワーク機能が追加でき,より柔軟なネットワーク制御が可能となる.仮想化技術の活用により,従来は設備利用率を考慮した制御手法(3),(4)やユーザ体感品質などのユーザ影響を考慮した制御手法(5)等が提案されている.しかし環境負荷低減がより重要な課題となってきた今,従来考慮されてきた設備効率等の指標に加えて環境負荷も同時に考慮するネットワーク制御が求められる.
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