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令和6年1月1日に発生した能登半島地震では,土砂崩れ等によって通信回線の途絶や基地局の倒壊が発生した.また,陸路が断絶されたことで非常用電源を含む物資の輸送がままならず,停電と電力不足によって多くの設備が影響を受け,大規模な通信障害が発生する事態となった.その結果,孤立した被災地では被災状況の迅速な把握が困難となり,通信インフラが被災者と救助者の双方にとって重要なライフラインであることが改めて浮き彫りになった.地震から1年以上が経過した今,地震災害からの復旧事例,及び災害時の影響を最小限に抑えることが可能な通信技術の研究開発動向について今一度確認し,関心を持つことが重要であると考えられる.
本特集は,災害復旧の実例から,防災・減災に関する技術的な方策まで,順に紹介する構成となっている.第1章及び第2章では,災害時における通信インフラの復旧について,具体的な実例を紹介する.第3章から第8章では,防災・減災に向けた通信技術の動向について,非常時に機能する臨時的な災害復旧システムから,災害に備えたプロアクティブなネットワークの設計・被害予測技術まで,様々なアプローチを紹介する.
第1章では,令和6年能登半島地震における放送中継局の震災復旧,及び避難所での情報へのアクセシビリティ確保の取組みについて報告する.第2章では,2019年に発生した震度6弱の地震によって被害を受けた山形県鶴岡市の温海テレビ中継放送所における放送確保から,NHKと民放各社による共同での新局舎建設までの復旧内容について紹介する.
第3章では,孤立地域における携帯通信サービスの臨時復旧技術として,有線給電ドローン及びドローン無線中継システムを紹介し,当該システムの具体的な運用事例についても述べる.第4章では,2.4GHz帯無線LANや920MHz帯LPWAから構成される自営無線ネットワークによる大規模災害時通信システムの提供に向けて,空対空及び地対空の観点から,本システムの通信特性の実測・検証について紹介する.第5章では,有線インフラに頼らない可搬性の高いドローン飛行用無線通信システムについて解説する.本システムは,自立するスマートポールアンテナを用いることで,災害時における仮設通信インフラとしての活躍が期待される.第6章では,成層圏に滞在する無人飛行体を介することで地上の被害状況によらずに携帯端末に通信環境を提供できるHAPS通信サービスに着目し,早期実用化及び高度化に向けた最新動向を紹介するとともに,災害対策へのHAPS活用の展望について解説する.第7章では,災害発生に先んじて通信サービスの強じん性を高めるという観点から,堅ろうなネットワークの設計制御技術について複数の検討事例を紹介する.第8章では,通信サービスを支える基盤である通信ケーブルを収容・保護する地下設備に焦点を当て,大規模災害時の被災予測技術について解説する.
最後に,御多忙な中,執筆に御尽力頂いた執筆者の皆様に深く感謝申し上げます.また,青山哲也委員並びに片田寛志委員をはじめとする特集編集チーム,学会事務局の皆様には本特集の企画・校閲・編集作業に多大な御協力を頂きました.この場をお借りして御礼申し上げます.
特集編集チーム
中川 雅弘 青山 哲也 片田 寛志 衣斐 信介 小河原健生 川本 雄一 金 ミンソク 久世 竜司 島﨑 智拓 田中 隆浩 西岡 隼也 西村 徹 平賀 健 丸田 一輝 宮下 真行 武藤 勇太 森 洋二郎 山之内慎吾
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