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村上陽一郎
現代社会における科学者の倫理的・法的・社会的問題
科学と技術(工学)とは,出自も知的構造もはっきりと違っていたが,主として20世紀における科学(の一部)の変質により,両者の間の壁は薄くなった.ただ,純粋に知的好奇心にのみ基づく知識の追求という科学本来の姿が失われたわけではない.ただ,技術との差が薄くなった部分では,科学研究のガヴァナンスが改めて問題になる.社会が,科学・技術の成果利用に関して,どのような新しい制度とガヴァナンスのシステムを構築できるか,それが未来社会の文化創造につながると確信する.