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解説
400ギガイーサ向け光4値振幅変調方式
4-level Pulse Amplitude Modulation (PAM4) for 400GbE
abstract
近年,データセンターを中心とするデータトラヒックが急増し,短距離大容量光ファイバ伝送のニーズが飛躍的に高まっている.100ギガイーサ(100GbE)に代表される従来の短距離向け光ファイバ伝送規格では,長らく光信号のオンオフを2値として利用する2値強度変調が用いられていたが,現在標準化作業中の400GbEでは,更なる変調速度の向上と低コスト化に向け,初めて光の多値変調である光4値振幅変調(PAM4)が採用されることとなった.本稿では400GbEの標準化動向,各距離カテゴリーと送受信機構成,PAM4変調方式について概説を行う.
キーワード:イーサネット,光ファイバ伝送,多値変調,400ギガイーサ
スマートデバイスやビデオストリーミング,クラウドアプリケーション等の普及によるインターネットトラヒックの増大を背景に,データセンター内外を結ぶ短距離光ファイバ伝送ニーズは今後も大きな増加が見込まれている.現在標準化作業が進められている400ギガイーサ(400GbE)は,このようなニーズを担う次世代超高速短距離伝送方式として大きく期待されている.
図1はイーサネット光伝送規格の総伝送速度とチャネル速度の変遷であり,ここ20年で伝送速度が400倍も向上していることが分かる.イーサネットの光変調には従来より光2値振幅変調(NRZ: Non Return to Zero)が用いられており,1995年の100メガイーサ(FE)の標準化以降,当初は専ら光変調の高速化により伝送速度の向上が図られてきた.しかしながら変調速度も2002年の10GbEでほぼ上限に達し,40GbE以降は全ての規格で4~16チャネルの並列伝送(並列ファイバ伝送若しくは波長分割多重伝送)が採用されて伝送容量の増大に寄与している.その後2010年の100GbEでは再び光変調速度が25Gbit/sまで高速化されている.
伝送速度が更に4倍となる400GbEの実現においては,変調高速化・並列数の増加は共にコスト・電力面で実現が難しい点が大きな実現課題となった.特にイーサネットで規定する高速光インタフェースは,発熱・電力やサイズ・正面面積などの制約が非常に厳しい大容量ルータやサーバ等に多数配置されるため,高速化とともに消費電力と小形化が強く求められる.
これに対し,400GbEでは上記の課題を抜本的解消する高速化技術として短距離光ファイバ伝送で初めて光多値変調が導入されることとなった.本稿では,400GbE光伝送規格の標準化動向とその構成,並びにその実現技術であるPAM4変調方式について概説を行う.
400GbEは現在普及の進みつつある100GbEの次の世代となる高速伝送規格であり,2014年5月にIEEE P802.3bs 400GbE Task Forceが設立され標準化が正式に開始された.図2はIEEE P802.3bsの標準化スケジュールである.標準化は,当初は2015年1月にベースライン方式策定を目標としていたが,光変調方式に2値振幅変調(NRZ)(2),4値振幅変調(PAM4)(3),(4),離散マルチトーン変調(DMT)(5),(6)などの複数の方式が候補となり選定に難航したものの,2015年7月に半年遅れでベースライン方式の策定を完了した.以後は,詳細な技術仕様の確定作業が進んでおり,2016年7月からドラフト2.0の投票が開始されている.この後,順調に進めばドラフト3.0の作成と2017年3月のLMSC投票を経て,2017年末に標準化作業が完了する予定である.
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