解説 オープンデータとその利活用に関する最近動向

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解説

オープンデータとその利活用に関する最近動向

Recent Trends in Open Data and Use

福島健一郎

福島健一郎 アイパブリッシング株式会社

Kenichiro FUKUSHIMA, Nonmember (iPublishing Co., Ltd., Kanazawa-shi 920-0024 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.1 pp.47-52 2017年1月

©電子情報通信学会2017

abstract

 近年,省庁や自治体から急速に広がるオープンデータは様々な側面で期待されている.オープンデータとは何か?その意義や目的についての解説をし,実際に進み始めた国内先進事例を紹介する.そして,今後のオープンデータ利活用の推進力の一つとして期待されるシビックテックという活動の広がりについても紹介し,ITの世界が生んだオープンなコミュニティによる新しい共助の形について考察する.

キーワード:オープンデータ,シビックテック,オープンガバメント,コミュニティ

1.は じ め に

1.1 オープンデータとは

 オープンデータとは誰もが自由に利用でき,再配布も可能なデータを言う.更に大きな特徴としてコンピュータが処理しやすい形式,つまり機械可読性が高い形式であることも求められている.

 このオープンデータは2003年,EUが発表したPSI-Reuse指令(公共部門が所有する情報の再利用に関する原則)がきっかけと考えられ,その後,米国オバマ政権のオープンガバメントに関する覚書も発表されて,次第に世界へと広がっていった.

 オープンデータの公開の意義は三つあると考えられる.それは「政府/自治体の透明化」,「市民参画」,「ビジネス」の三つである.

 一つ目の「政府/自治体の透明化」はオープンガバメントと呼ばれる領域である.政府/自治体が持っている様々な情報は市民に対してオープンに公開していくことで透明性が高まっていくし,透明性が高まっていけば,その政策が正しいものなのかの判断がしやすくなる.そもそも市民の税金で整備されている情報を公開しない理由はないとも考えられる.

 また,政府/自治体自身にもメリットがある.これまでも情報公開制度を通して情報の公開を求められてきたが,こうしたデータをあらかじめオープンデータとして公開していくことで,問合せが減少し,行政の効率を改善することが可能になる.

 そういったことから,個人情報のような公開すべきではないものを除いて,原則オープンデータとして公開していこうという考えがあり,それは「Open By Default」と呼ばれている.

 二つ目の「市民参画」は一点目の「政府/自治体の透明化」に対するコインの表裏のようなものだ.市民が自ら政治や社会,地域運営に携わっていこうと考えたとき,それをしっかり判断するための材料がないと正しく判断できない.そのため,オープンデータがとても大事になってくる.

 また,判断だけではなく,市民が自ら社会の課題解決に関与していこうとしたとき,政府や自治体が持つデータを利用したい場合が出てくる.これまでは,著作権で縛られたデータであったため,必ず許諾を求めていかなければならなかったが,もしオープンデータになっていればそういった行為は不要になり,市民が積極的に社会課題解決に関わっていけるようになる.

 市民にとってデータの許諾など気にせず,自由に利用できるという環境は,市民の自発的な社会参画を求めていく上で,とても大事なものだ.

 三つ目の「ビジネス」は,企業側の視点となる.政府/自治体が持つ多くのデータの中には,それを活用していくことでビジネス価値が生まれるものも多い.これまではお金を掛けて集めてきたデータの一部が無料で手に入るだけでも価値があるし,それどころかこれまでは入手できなかったデータが手に入る可能性もある.


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