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1990年頃から始まった映像メディアのディジタル化の波は,四半世紀にわたる一大技術革新を引き起こした.小形軽量カメラや各種センサが公共場所や移動体に配され,その間の映像通信も可能となった.一方,情報技術全般で見れば,いわゆる「IoT」「ビックデータ」が人類の生活を変えようとしている.膨大な画像・映像データを効率良く処理する技術の整備により,更なる革新が起きるだろう.
我々は,映像メディア技術の新たなイノベーション創出を目指し,多数のカメラやセンサで捉えた映像データを,時空間を飛び交う光線の集合として扱い,光線の物理的・空間的・時間的性質を考慮した計算処理により,新たな自由視点映像や自由焦点映像を再構成する技術体系「汎光線時空間(PoTS)映像学」を提唱し,その実現に向けた研究開発活動のために,PoTS時限研専を2016年度からスタートした.PoTSとは「Plen-optic Time Space」の略であり,日本語ではこれを「汎光線時空間」と呼ぶ.
その源流は,1990年代の二つの着想であり,一つは,東大・原島博教授の研究室が発案した「光線空間法」,他方は,米国カーネギーメロン大で金出武雄教授が提唱した「Virtualized Reality」である.その後,この二つの着想は,数々の後継研究を生み,映像の入出力ハードウェアの進歩を伴いながら,活発に研究されてきた.
一方で,ハードウェアの進歩も物理的限界が近付いてきており,新たなブレイクスルーが必要な段階に来ているという考えもあった.これに対し,2000年代にComputational photographyという考え方が提唱され,情報技術との融合によって,光学素子や電子デバイスの技術による限界を超えた高度なイメージングに取り組む分野が生まれている.ACM SIGGRAPHでのセッションやInternational Conference on Computational Photography(ICCP)など,世界でも徐々に存在感を高めており,今後もますます発展していくものと考えられる.
国内においては,長年にわたる発展の過程で,映像メディア分野関連の複数の異なる研究会等に分散しながら議論・検討されてきた.本PoTS映像学時限研専では,それらが同一コミュニティに再度集まって議論し,更に大きな技術体系として発展させることを目指している.
(平成29年5月1日受付)
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