小特集 2-1 FPGA活用による顧客価値の提供

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Vol.100 No.2 (2017/2) 目次へ

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2.産業界でのFPGAアクセラレーション

小特集 2-1

FPGA活用による顧客価値の提供

Customers’ Value Creation Using FPGA Accelerators

竹中 崇 井上浩明 鈴木紀章

竹中 崇 正員 日本電気株式会社システムプラットフォーム研究所

Takashi TAKENAKA, Member (System Platform Laboratories, NEC Corporation, Kawasaki-shi, 211-8666 Japan),

井上浩明 正員 日本電気株式会社IoT戦略室

Hiroaki INOUE, Member (IoT Strategy Office, NEC Corporation, Tokyo, 108-8001 Japan),

鈴木紀章 正員 日本電気株式会社経営企画本部

Noriaki SUZUKI, Member (Corporate Strategy Division, NEC Corporation, Tokyo, 108-8001 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.100 No.2 pp.98-102 2017年2月

©電子情報通信学会2017

abstract

 社会インフラの高度化を支える情報処理基盤は,実世界から収集した大量のデータを高速・低遅延に情報処理し,実世界に素早くフィードバックしなければならない.しかしながら,多数の汎用サーバでの分散処理では,リアルタイム性,機器コスト,消費電力,設置スペースなどの課題がある.本稿では,大量データの高度な情報処理が求められる情報処理基盤において,リアルタイム・省電力・省設置スペースを実現するFPGA活用技術の取組みについて紹介する.

キーワード:アクセラレータ,FPGA,組込み,データセンター

1.は じ め に

 安全・安心な社会を実現するため,日常生活を豊かにするために,情報通信技術のサポートによる社会ソリューションの提供が求められている.例えば,社会インフラの状態監視や障害予知検知などがそれにあたる.この社会ソリューションを支える情報処理基盤には,実世界から収集した映像やセンサデータなどの膨大なデータを高速・低遅延に処理することが求められる.

 大量データの情報処理を汎用CPUのみで行おうとすると多数のサーバが必要になり,機器コストや消費電力,設置スペースが必要となる.情報処理システムの低コスト化,省電力化は企業の競争力からの要請も大きい.また,多数のサーバで分散処理すると,サーバ間の通信や外部とのデータ入出力のために,遅延時間が問題になる.そこで,適した処理であれば汎用CPUより高い価格性能比,電力性能比で処理可能なアクセラレータを活用する取組みが注目されている(1).アクセラレータとしては,数十~数百以上の多数のプロセッサコアを1チップに集積して並列処理により高い性能を発揮するGPUやメニーコアプロセッサ(2),専用ハードウェアの高速処理とソフトウェアの柔軟性を併せ持つField Programmable Gate Array(FPGA)などがある.アクセラレータを搭載して個々のサーバの情報処理能力を強化することで,必要な処理をより少ない台数のサーバで実行可能となり,コスト,電力,設置スペース,遅延の改善が期待できる.

 アクセラレータの中でもFPGAは,汎用CPU,メニーコア/GPUに次ぐ,第3のコンピューティングデバイスとして注目を集めている(3).FPGAは,超並列処理可能なハードウェアと,処理の変更が可能なソフトウェアとの両方の性質を持ち,低遅延性,処理時間の確定性,専用演算処理性能,低消費電力性能に特徴がある.本稿では,社会ソリューション提供のための情報処理基盤としてのFPGA活用技術について,組込み装置領域,クラウド領域の両面で紹介する.

2.組込み装置におけるFPGA活用技術

 組込み装置におけるFPGA活用は,高速な信号処理が必要な携帯電話の基地局,ディジタル家電などの低消費電力が必要な組込みシステムなどで進められている.特に,処理の変更が可能であることから,新規装置を早期に市場投入する必要がある際にその価値を発揮する.


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