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小特集
電磁界シミュレーション技術の進展
電磁界シミュレーションとは,マクスウェル方程式を解くことで電磁界分布の物理構造依存性あるいは物理構造と電磁界の相互作用を把握する技術です.方程式の解法には時間領域解法,周波数領域解法等様々な手法がありますが,解析対象,計算精度,計算機性能等を考慮した上で,技術者自身が計算法を選択,利用しています.現在,計算機性能向上とともに進化,発展してきた電磁界シミュレーション技術は,更なる計算効率化に向けた新たな計算機アーキテクチャ,アルゴリズムの研究開発とともにその対象領域を「デバイス」,「モジュール」,「システム」へと順次拡大しています.
シミュレーション技術の産学への貢献という観点から,設計段階で特性把握が可能であるという意味で「計算機実験システム」という別名を持つ電磁界シミュレーション技術は,産業界において,技術者の「設計支援ツール」としてTAT(Turn Around Time)削減による競争力強化に貢献しています.また,アカデミックな分野では,新しい物理現象を仮想空間で発現させてみるためのツールとしても使われています.更に,目に見えない物理現象を可視化できるということから,教育界においては,物理現象の原理原則を簡単に理解できる「教育支援ツール」として一部利用されています.このように,実は電磁界シミュレーション技術は様々な領域へ貢献しているとともに,今後もその適用領域を広げていくものと考えられています.
今回,読者の皆様の電磁界シミュレーション技術への理解を深めるとともに,シミュレーションを基盤とした新たな研究開発分野,サービス等の創造に向けた一助となればと考え「電磁界シミュレーション技術の進展」と題し,本小特集を企画しました.
第1章で,「シミュレーションって何?」,「シミュレーションってこれからどうなるのかな?」という読者に向けて,エレクトロニクス分野におけるシミュレーション技術の発展の歴史を振り返るとともに今後の展望について紹介します.第2章で,「電磁界シミュレーションを使ってみたいが使い方が?」,「シミュレーション時間は?」,「結果は正しいのか?」という電磁界シミュレータ利用初心者向けに,電磁界シミュレータを利用する際のテクニックについて紹介します.また,第3章及び4章で,「アイデアがあるけど本当にできるのかな?」,「これって新たな現象?」という先端デバイス技術者向けに,「人工周期構造体メタマテリアル」及び「金属フォトニック結晶」を利用した新たなデバイス技術例を紹介します.第5章で,「電磁界シミュレーションでどこまでできるのかな?」,「他の分野への応用は?」というエレクトロニクス分野を含む異分野連携技術者向けに,電磁界シミュレーションと機械学習との連携による医療応用について紹介します.
今後,シミュレーション技術は,分野を横断した各技術との連携,融合により「設計支援ツール」から「自動設計ツール」へと進化,産業界へ多大なる貢献をしていくものと考えています.また,エレクトロニクス分野における産業界,アカデミア,教育界への貢献はもちろんのこと,分野を超えた「社会創造ツール」として社会へ貢献‘できる’,いや‘すべき’とも考えています.
今回の小特集を読み終えた読者の皆様の中で,「あれ,シミュレーションって面白いんだ」,「使えるかも」,「やってみよう」と思って頂ける方が増えれば幸いです.
最後に,多忙な中,原稿の執筆を御快諾頂いた執筆者の皆様,企画について御協力頂いたエレクトロニクスシミュレーション研究専門委員会の皆様,及び,学会事務局の方々に深く感謝致します.
小特集編集チーム
木村 秀明 大寺 康夫 宮本 智之 弥政 和宏 西島 喜明 平野 拓一 堀部 晃啓 吉松 俊英
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