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電磁界シミュレーション技術の進展
小特集 2.
電磁界シミュレータ利用の勘所
Point to Use Electromagnetic Simulator
abstract
現在では電磁界シミュレータは設計に必要不可欠なものとなっている.ハードウェアの向上及び解析アルゴリズムの改善で電磁界シミュレータは便利な道具となったが,分野外の人にとっては簡単には使いこなすことが困難な場合が多いのではないだろうか.本稿では,電磁界シミュレータを使いこなすために必要な知識と技術について解説する.計算コストの見積もり,電磁界シミュレータの目的と解析の種類(時間領域/周波数領域,励振問題/固有値問題,励振の種類),電磁界解析法の種類,規範問題の有用性,電磁界シミュレーションの勘所について説明する.
キーワード:電磁界シミュレーション,シミュレータ,規範問題,励振方法,勘所
20年ほど前は高周波回路・アンテナの設計は手計算と実験が主流であったが,現在では電磁界シミュレータは設計に必要不可欠なものとなっている.必要不可欠という意味は,なくても問題ないかもしれないが,シミュレータを使うことで試作回数を減らして大幅に予算・時間コストを減らせることを意味している.また,問題が生じたときに実験だけでは何が起こっているか想像しかできないが,電磁界シミュレータがあると定量的に空間の電磁界分布がどうなっているからそのような現象が起こるということを突き止めることができる.材料定数の推定や人体への影響の診断(1)などもシミュレーション活用の一例である.更に,電磁波工学の教育の場で,直感的に分かりやすく可視化することができる(2),(3).
電磁界シミュレータはこのように便利な道具となったが,分野外の人にとっては簡単には使いこなすことが困難な場合が多いのではないだろうか.本稿では,電磁界シミュレータを使いこなすために必要な知識と技術について解説する.
電磁界シミュレータにかかわらず,全てのシミュレータについて言えることであるが,シミュレータの実用性は計算機ハードウェアの発展に支えられている.ここではどのようにハードウェアが発展し,シミュレータが実用的になったのか俯瞰する.また,シミュレータで解くことができる問題の限界について考察する.図1にスーパコンピュータ(用語)の計算速度の向上の年代変化のグラフを示す(4).縦軸を対数で表示した片対数グラフで直線近似(横軸を,縦軸をとして線形近似は0.2743-544.97)できるので指数関数的に増大していることが分かる.民生用コンピュータの性能は一般にスーパコンピュータの1/10,000程度と言われ,若干の差は許容しても比例関係にあることは確かである.図2にCPUチップ内のトランジスタ数の年代変化のグラフ(データは文献(5)を利用)を示す.チップサイズに多少の違いがあるものの,大きな差はないのでトランジスタ集積度と考えてもよい.「18か月で半導体の集積密度は2倍になる」と予言したムーアの法則に従うように集積密度が指数関数的に増加しているのが分かる.(図2の近似曲線0.1456-283.59の傾きは若干落ちて100.1456×1.5≒1.65倍であるが.)ムーアの法則(6),(7)があるからこの増加を維持したのか,なくても維持できたのかは議論のあるところであるが,産業界ではロードマップを描き,将来計画を立てるには大いに役立ったそうである(8).図3にハードディスク記録密度の向上を示す(9).同一体積のハードディスクを考えた場合,容量は記録密度に比例する.1990年代には垂直磁気記録方式が実用化され,増加の傾きが大きくなっているが,全体として指数関数的に記録密度が増加していることが分かる.
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