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解説
アンテナから見た放送と通信の違い
The Differences between Broadcasting and Communication about Antenna
abstract
地上テレビ放送のディジタル化がスタートして10年以上が経過して送信機等は更新時期を迎えている.一方の移動通信は5Gに向けて新たな技術が投入されようとしている.移動通信用の基地局送信アンテナは,双方向ながら固定通信用アンテナのように双方のアンテナが正対しているわけではないが,サービスエリア内の多数の端末と通信する.放送用送信アンテナは,あまねく電波を放射することを目的としているので,広大なサービスエリアに一方的に送信される.送信アンテナから見た違いを,移動通信用アンテナと比較しながら放送用送信アンテナとしての特徴を解説する.
キーワード:アンテナ,放送と通信,双ループ,オムニ,指向性
アンテナとは,電波を送受信する装置という意味のほかにも,情報を探る触覚のような意味にも使われる.私も上司から「お前のアンテナは低いぞ!高く張れ!」と幾度となく言われた記憶がある.いつ頃から使われたか定かではないが,アンテナは高い所にある方が感度はいいと分かる言葉である.事実,放送用送信アンテナはできるだけ高い場所に設置されている.
放送とは,「公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信(放送法第二条第一号)」をいうことから,広義的には通信の一部とみなされるが,狭義的には「一方的かつ同時に不特定多数に向けて送信」であり,一線を引いている.この通信とは情報の伝達をいい,古くはのろしなど映像(視覚)で送る点から見れば光通信の始まりがあり(のろしも高く上がることで遠くまで見える),文字が発明されたことで手紙などが通信を発達させた.次に電気が発見されて電気通信が現代通信に欠かせないものとなり,更に光通信が現代の主流となっている.これらの情報の伝達においては,ケーブル以外では空間伝送となり,必須なものがアンテナとなる.
2011年7月24日に地上アナログテレビ放送が終了してディジタル放送に代わったが,その置局は2003年に東京タワーに設置されたアンテナからスタートした.そのとき,地上ディジタル波7ch分のアンテナ設置場所を確保する戦いが始まった.アンテナというのは周波数の関数であり,周波数が高くなれば相対的にアンテナの大きさは小さくなり,逆に低くなればアンテナは大きくなる.同じ周波数ならば,アンテナ面積が大きくなれば指向性はシャープになる.また電波は高い場所から放射されることにより,地上の構造物の影響を受け難くなり遠くまで到達することになる(1).
移動通信用の基地局送信アンテナは,受信エリア内に収容される移動局と双方向通信を行う目的ながら,固定通信用アンテナのように双方のアンテナが正対しているわけではない.放送用送信アンテナは,放送区域内にあまねく電波を放射することを目的としているので,不特定多数に一方的に送信される.送信アンテナから見ると,移動通信用基地局送信アンテナも放送用送信アンテナもよく似た特性を持っているのではあるが,本稿では,これらの通信用(携帯電話用)アンテナと比較することで,放送用送信アンテナとしての特徴を解説する.
双方のアンテナの違いを説明する前に,その背景となる二つの送信システムの違いを簡単に説明しておきたい.
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