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今まで人が経験と勘で対応してきたアナログな世界をディジタル化していく動きが進みつつある.
ディジタル化は今に始まった話ではない.水位や流量などの河川情報のテレメータ観測,自動販売機の管理システム,重機のモニタリングシステム,エレベータの状態監視システム,公共バスの運行管理システム,店のPOSシステムなども,アナログな世界をディジタル化したものである.
ディジタル変革とは,このようなディジタル化の動きがあらゆる場所で生じることで,事業や組織や社会が大きく変わることを指す.クラウド,センサ,無線通信などのコストが下がり,使いやすくなったことが背景にある.
例えば,ごみ箱もスマート化される.街角や公園にあるごみ箱からのごみの収集である.それぞれのごみ箱のごみの量をセンサで測ることによってディジタル化すればごみの量が分かる.リアルなゴミのデータを回収業者に伝えれば,どのタイミングで回収すればよいかが分かり,それまで毎日だった回収頻度を三日に一度で済ますことも可能になる.
人が見れば分かることであるが,それをディジタル化してデータに基づいて処理することで,生産性の向上につなげることができる.我々の回りには,多様なアナログな世界が広がっている.これらをディジタル化して生産性を高め,価値を創り出していくのがディジタルだ.
ディジタルを導入し,人の経験と勘を事業のプロセスに埋め込むことで,生産性の抜本的な向上,更には付加価値の創出を可能にすることができる.経済成長には生産性の向上が必須であることからも,ディジタルが成長戦略の一丁目一番地であるといっても過言ではない.
ディジタルのビジネスチャンスは,生産性やサービス向上の余地がある分野を見つけ出すことにある.世の中には,生産性の低い産業分野が膨大に存在する.ディジタルにより2030年に世界のGDPを約15兆ドル押し上げることができるとの試算もある.
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(1)によれば,日本の総人口は,2004年の1億2,784万人をピークに,2030年には1億1,913万人,2053年に1億人を割り,2060年には9,284万人にまで減少すると見込まれている.2100年には5,000万人弱まで減少し,明治時代後半の水準に戻っていくと見られている.
国土交通省長期展望委員会からは,2050年には現在人が住んでいる面積の20%が無人化するとの推計が出ている(図1)(2).日本創成会議からも,2040年に20~39歳の女性の数が49.8%の市区町村で5割以上減り,推計対象の全国約1,800市町村のうち523では人口が1万人未満となって消滅する恐れがあるとの推計が出ている(3).
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