小特集 子供の科学教室に見るシニアの活躍──能力,技術の伝承と生きがいを考える── 編集にあたって

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Vol.101 No.3 (2018/3) 目次へ

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小特集

子供の科学教室に見るシニアの活躍

──能力・技術の伝承と生きがいを考える──

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 山中直明

 新聞やテレビで毎日のように“超高齢化社会の到来”と,そのインパクトが取り上げられている.電子情報通信学会も毎年,現役を後輩に譲り,多くのシニアメンバーが誕生している.多くの経験やノウハウを蓄え,知力・体力共に十分な世代であるにもかかわらず,それらのメンバーの能力を十分に生かし切れていないのも事実である.

 図1は本会の個人会員の年齢構成である(2017年6月現在).会員のピークは学生員と53歳である.学生が,特に大学院教育の中で学会活動を経験することは,科学技術立国として大変重要であるが,多くの学生が卒業と同時に本会を一度退会してしまうことは残念である.会員はその後増加しているようにも見えるが,経年変化を見ると,当初43歳にあったピークが10年で10歳シフトしているという現象がある.若手の学会離れは少子化問題とだけは言い切れない.

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 本題に戻すと,本会は60歳若しくは65歳の定年退職後も比較的多くの会員が残っており,現状70歳(制限あり)で会費免除制度があることもあり,数千人のメンバーがいる.東京支部では,これらのまだまだお元気で,またノウハウや経験も豊かなシニアメンバーの協力を得ながら,一方,子供の科学離れに対して取り組む活動をしてきた(図2).

fig_2.png

 本会では子供の科学教室を主催すると同時に,東京支部では,支部の大きなミッションとして,公募型の子供の科学教室を行っている(図3).これは学会の社会貢献であると同時に,未来の科学者,エンジニアを育てる活動でもある.公募型とは,支部会員が主体となり,子供の科学教室を企画し,提案する.支部は,その中から学会や支部活動との整合性を考えつつ,長い視点に立ち,ボランティアを育てながら,社会貢献を行うものであり,筆者の記憶ではもう10年ほど活動していると思う.

fig_3.png

 筆者も多くの老若男女のボランティアたちと,多くの子供たちと,この子供の科学教室に参加する機会を得ており,今回は実際に活動しているシニアの方々にとって子供の科学教室がどのようなものであるか? という視点で寄稿を頂いた.多くのシニアメンバーは自分の孫以上に年齢の離れた小学生たちに囲まれて,体力の続く限り子供の科学教室を楽しんでいる.更に,科学教室のたびに懇親会を行い,学生員のボランティアやお父さん,お母さんたちのボランティアとビールを片手に楽しい時間を過ごしている.ある人が「子供が遊んでもらっているのか,おじいさんおばあさんが遊んでもらっているのか分からないね」と言った.少し言い過ぎではあるが,確かに充実して生き生きとしたシニアメンバーが,「私はNECで設計をやっていた」「交換機の原理を知らないだろ」と学生に言って,言われた学生はキョトンとしながら会話を楽しんでいた.また,「IBMにいたときはアメリカにばかり行っていた」などと学生と話し,世界で活躍されていたシニアメンバーが,時がたつのを忘れている姿は好印象である.

 東京支部の子供の科学教室は一部,ディレクトフォースという,やはりシニアなメンバーから構成された団体から協力を得て相互に協力している.10年ほど前に出会った頃は,むしろ東京支部で開催する我々の科学教室に一部参加して頂いていた感じであったが,今では20程度のプログラム,数十人のボランティアを抱え,全国で科学教室を主催する本格的グループとなった.本会も数多くのベテランボランティアを抱えているので,ディレクトフォースのように,もっと広く活動できるとよいと思っている.

 本小特集では,シニアメンバーの視点から科学教室を紹介してもらった.1件目はNECで長年エンジニアをされ技術立国を支えてこられたメンバー,もう1件はディレクトフォースのメンバーでもあり,富士通でエンジニアをされたメンバーと,知財や経営管理を専門として三菱重工で活躍されたメンバーに,ディレクトフォースの活動を含めて紹介してもらう.

小特集編集チーム

 山中 直明  高田 潤一  今田 美幸  伊東  匡 


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