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強度を観測するときに位相の情報が失われることを位相問題と呼び,計測に広範囲な関わりを持つ.物質構造解析では試料に線などを照射し,その散乱波を検出することで,試料のフーリエ強度に対応する回折パターンから原子の周期的配置を知ることができる.小さな構造を明らかにするだけでなく,大きな対象の観測においても位相問題は関わりがある.天体の微弱な電波を複数のアンテナで観測する電波望遠鏡では,電波の強度を観測し位相を復元することで,未知の天体の姿を捉えることができる.このような光学分野だけでなく,量子系などでも扱われている広い問題設定である(1),(2).
1999年にMiaoは非周期構造の物質の回折パターンから位相回復をすることで,実像が得られることを実際の実験データで示した(3).これをきっかけに,回折強度から直接的に実像構成することから回折イメージングと呼ばれるようになった.実用的な顕微法となるために,有効で確実な計算法が重要となり,実験と計算手法を組み合わせることで研究が進められてきた(4).本稿では位相回復を使った回折イメージングの数理計算を中心に実験研究も含み解説する.
を対象の実像を表現する実空間,を逆空間として,両方とも複素ベクトル空間とする.実空間上で定義される未知の実像とする.計算機による処理を行う関係上,及びを二次元の離散空間()とする.のフーリエ変換は以下のように与えられる.
(1)
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