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解説
ムーアの法則の限界が見えた今,デバイス研究はどこに向かうのか
――コンピュータアーキテクチャの視点から――
Where Does Device Research Go in Post Moore’s Era?: An Architecture Perspective
abstract
コンピュータシステムの発展を支えてきたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)の微細化がついに終えんを迎えつつある.これは,着実に発展を遂げてきたコンピュータシステムの性能向上が停滞することを意味する.その一方,ニーズ面ではビッグデータやAI処理に代表されるように高度かつ複雑なアプリケーションが爆発的に普及しており,持続可能な高度情報化社会を実現するには更なる情報処理能力が求められる.したがって,このようなニーズ/シーズ間ギャップを解消すべく,微細化に頼らない新たなコンピュータシステム構成法の確立が今まさに世界で求められている.そのためには,トランジスタ数の増加という量的変化ではなく,新奇デバイスを用いた質的変化が求められる.本稿では,このような質的転換を目指したコンピュータアーキテクチャの観点から今後のデバイス研究の方向性を探る.
キーワード:コンピュータシステム,微細化限界,新奇デバイス,コデザイン
ついに半導体の微細化が終えんを迎えつつある.1970年代初頭にコンピュータの頭脳であるワンチップ汎用マイクロプロセッサ(CPU: Central Processing Unit)が開発されて以来,およそ半世紀にわたり半導体の微細化はコンピュータシステムの継続的発展を支えてきた.「微細化なくして情報技術の発展なし!」と言っても過言ではないであろう.半導体の微細化が止まることは,すなわち,コンピュータシステムの性能向上を実現してきた強力かつ確実な手段を失うことを意味する.その一方,我々の生活を支える社会情報基盤には更なる高性能化や低消費電力化/低消費エネルギー化が求められている.現代並びに未来社会において,ディジタル化の流れを抑制することは非現実的であり,情報処理量の永続的増加は疑う余地がない.そのため,持続可能な高度情報化社会の実現にはコンピュータシステムの絶え間ない高性能化と低消費電力化/低消費エネルギー化が必要不可欠となる.このような状況において,我々コンピュータアーキテクトは何をすべきであろうか?
このような本質的問題を解決するアプローチとして,MOSFETに代わる新しいデバイスの活用を模索する流れがある.本稿では,特に,筆者らが進めている「単一磁束量子デバイス」並びに「フォトニックデバイス」を活用したコンピュータシステムの実現に向けた研究開発を例に,今後のデバイス研究とアーキテクチャ研究の連携と方向性について議論したい.
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