小特集 4. ディジタル工作機械によるアイデアの具現化と学生プロジェクトの動向

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回路とシステムの研究を「社会実装」するまで

小特集 4.

ディジタル工作機械によるアイデアの具現化と学生プロジェクトの動向

Realization of Ideas by Digital Machine Tools and Trends of Student Projects

市川友貴

市川友貴 千葉工業大学情報科学部情報工学科

Yuki ICHIKAWA, Nonmember (Faculty of Information and Computer Science, Chiba Institute of Technology, Narashino-shi, 275-0023 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.11 pp.1018-1022 2019年11月

©電子情報通信学会2019

abstract

 ディジタル工作機械が与えたものづくり手法の変化とアイデアを具現化するまでの過程,筆者の携わっているプロジェクトを具体例として,学生プロジェクトがどのように立ち上がり,社会へアウトプットしていくかを論じる.

キーワード:ディジタル工作機械,プロトタイピング,IoT,学生プロジェクト

1.は じ め に

 3Dプリンタ(1)やレーザカッターといったディジタル工作機械により,専門的な加工技術を持たなくても設計データから物体の形成,素材の加工を容易に行うことができるようになった.よって,個人レベルで可能な「ものづくり」の幅が広がっており,上記で示したようなディジタル工作機械を利用可能な工房(2)などのスペースも増えている.このような環境の変化はこの数年のものであるが,それによってアマチュアを含む様々な人が工作機械に触れられる機会が増え,個人であってもアイデアを形にすることへの敷居が低くなりつつある.これには比較的安価な設計ソフトウェアやプロトタイピングツールが登場したことも大きい.

 また,学生が自ら社会課題を解決するプロジェクトを立ち上げ,プロダクトを開発し,展示会に出展,更には起業につながることも珍しくはなくなっている.本稿では,筆者が実際に携わっているプロジェクト(3),(4)を例として,アイデアを具現化するまでの過程,ディジタル工作機械を用いたプロダクト開発や検証の方法,及び学生プロジェクト全体の動向について考察する.

2.筆者が取り組んでいるプロジェクト

2.1 眼鏡型補聴デバイス

 筆者らのグループが取り組んだ,片耳難聴者向けの眼鏡型補聴デバイスasEarsを図1に示す.これは,聞こえない耳側のマイクから周りの音声を拾い,聞こえる耳側に搭載した骨伝導スピーカを通して音声を伝えるものである(3).また,このプロジェクトでは,筆者はきょう体の設計を担当していた.このプロジェクトは,後述するように,Todai To Texas 2018の準グランプリを受賞し,またスタートアップの登竜門としても知られるSXSW2018のInteractive Trade showに出展するなどの注目を浴びた.

図1 筆者らのプロジェクトで開発した眼鏡型補聴デバイス


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