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折り紙の科学
小特集 8.
折り紙のバイオ
――医療への応用――
Bio-origami Engineering: Applications in Medical Field
abstract
私たち日本人が小さい頃から慣れ親しんでいる折り紙は,近年,工学分野をはじめとして様々な分野に応用されている.特に医療や再生医療への応用は,微細加工技術,3Dプリンティング技術との組合せにより,目覚ましく発展してきている.iPS細胞などを用いた再生医療においては,細胞で狙った立体構造を安価に大量に作る必要がある.そこで,細胞を折り紙のように折ることで簡単に立体構造を構築することができると考えた.本稿では,筆者がこれまで取り組んできた折り紙技術を用いた医療器具や再生医療への応用に向けた研究について紹介する.
キーワード:バイオ折り紙工学,バイオメムス,再生医療,細胞培養
折り紙は,日本伝統の遊びの一つで,折り紙というと鶴,朝顔や船などの簡単な折り紙を思い浮かべる人が多いのではないだろうか.最近では,折り紙の山折り・谷折りの折りパターンを工夫することで,複雑な形状の作品を1枚の紙から作製できるようになってきている.複雑な形状は,伝統的な折り紙の折りの技術と折りパターンの幾何学的な計算とコンピュータによるシミュレーション技術の融合によって達成されたものである.近年,折り紙の折り畳み技術は,数学,情報科学,材料工学,構造工学,建築,デザインなど様々な分野において,「折紙工学-Origami Engineering」として,国内外で盛んに研究が行われるようになってきている(1)~(6).医療や再生医療への応用も,微細加工技術や3Dプリンティング技術との組合せにより,目覚ましく発展してきている(7)~(9).
折り紙の折り畳みの代表的な特長は,折ることで,簡単に1枚の基板(二次元形状)から立体(三次元形状)が作り出せること,立体的な形状をコンパクトに折り畳み収納できることである.これらの特長を生かし,折り畳み技術の応用を目指した研究・開発も行われている.代表例として,宇宙で使用するアンテナや太陽パネルのデザインへの応用である.「ミウラ折り」と呼ばれる折りパターンを利用したアンテナや太陽パネルは,ロケット内では小さく畳まって収納され,宇宙空間内では簡単に展開できる構造になっている(4).自然界の中の折り畳み構造から効率的な収納を学ぼうとするバイオミメティックの研究も行われている(5),(6).植物は,春になり暖かくなると,小さなつぼみに折り畳まれていた葉が成長し始め,最終的には大きな平面へと展開する.このような自然界で工夫されている折り畳みを利用することで,より効率的に収納できる構造物を作製することができるのではないかと考えられている.
本稿では,筆者がこれまで行ってきた折紙工学の医療分野への応用研究に関して,特に,ステントグラフトという医療器具への応用と,細胞の立体構造を作製し,再生医療に応用する研究に関して紹介したいと思う.私たち日本人が親しんできた折り紙が医療分野に応用できることを知って頂けたら幸いである.
折り紙の医療器具への応用として,動脈硬化で詰まった血管を広げたり,動脈瘤により弱った血管の破裂を防ぐ治療に用いられるステントグラフトについて紹介する.
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