解説 RGB-Dカメラと機械学習で無線通信品質を見る

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解説

RGB-Dカメラと機械学習で無線通信品質を見る

Predicting Received Wireless Signal Power by Using RGB-D Camera and Machine Learning

西尾理志

西尾理志 正員 京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻

Takayuki NISHIO, Member (Graduate School of Informatics, Kyoto University, Kyoto-shi, 606-8501 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.4 pp.346-352 2019年4月

©電子情報通信学会2019

abstract

 本稿では,空間情報を取得するセンシングデバイスとして注目されるRGB-Dカメラと,目覚ましい発展を遂げている機械学習について,その原理と無線通信への応用例としてミリ波通信受信電力予測を紹介する.ミリ波通信は第5世代移動通信や次世代無線LANの大容量化の重要要素だが,歩行者や車などによる見通し通信路遮蔽により受信信号電力が急しゅんに低下する問題がある.RGB-Dカメラにより電波伝搬環境のジオメトリを取得し,機械学習によりジオメトリと受信信号電力やスループットなどの通信品質との対応関係を学習することで,将来の受信電力を予測することが可能となる.

キーワード:機械学習,RGB-Dカメラ,ミリ波通信,受信電力予測

1.は じ め に

 無線通信分野では,無線通信帯域の枯渇により,新しい周波数帯域を用いた無線通信システムの研究開発が盛んに行われている.特に,次世代移動体通信(5G)や次世代無線LAN IEEE 802.11(用語)ayでは高速化・大容量化に向けて,10GHz以上のミリ波通信帯域の活用が検討されている(1),(2).しかし,これらミリ波通信では,回折や反射,散乱による損失が従来のマイクロ波通信と比べて大きく,見通し通信路の遮蔽による受信電力の減衰が大きい.例えば,ミリ波通信では歩行者が見通し通信路を遮ると,20dB程度の減衰が生じる(3).一方,歩行者や車両は反射材にもなるため,その配置によっては,減衰が緩和される可能性がある.このように遮蔽物や反射物となる人や車が行き交うモバイル環境では,電波伝搬環境が大きく変化し,それに伴い通信品質も大きく変動することが想定され,無線端末収容のためのアクセスネットワークに適用する際の課題となっている.

 この課題に対し,筆者はミリ波受信電力を予測する技術,及び,予測に基づくプロアクティブ制御を提案している(4)(6).前述のとおり,ミリ波通信の通信品質は電波伝搬空間情報に強く依存する.本技術では三次元空間情報を内包する画像をRGB-Dカメラから取得し,機械学習(用語)を用いることで画像から受信電力の予測を実現する(図1).画像を用いるため,通信品質予測のためのシグナリングが不要であり,スリープ状態の場合やアソシエーションを行っていない送受信局間の受信電力も予測可能である.また,画像の時系列を用いることで,将来の受信電力の予測が可能であり,500ms先の受信電力の予測に成功している.

図1 ミリ波通信における遮蔽

 本稿では,ミリ波受信電力予測技術に関して,その要素技術であるRGB-Dカメラと機械学習について基本原理を解説した後,ミリ波受信電力予測技術について紹介する.


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