解説 プリンテッドフレキシブルセンサと今後の展望

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Vol.102 No.4 (2019/4) 目次へ

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解説

プリンテッドフレキシブルセンサと今後の展望

Printed Flexible Sensors and Perspectives

竹井邦晴

竹井邦晴 大阪府立大学大学院工学研究科電子・数物系専攻

Kuniharu TAKEI, Nonmember (Graduate School of Engineering, Osaka Prefecture University, Sakai-shi, 599-8531 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.4 pp.353-358 2019年4月

©電子情報通信学会2019

abstract

 情報処理技術の発展に伴い,様々な対象物からの情報を取得・解析することで人々の生活をより良くする新しい社会の構築が盛んに行われつつある.本実現へ向け大面積表面から多種情報を取得する技術やデバイスコンセプトが提案され,その一つとして印刷技術による大面積・低価格・多機能なセンサシートが挙げられている.本稿では,このような印刷技術による多機能センサシートについて筆者らのグループが行ってきた研究成果を基に紹介する.応用は様々であるが本稿では健康管理応用に向けた取組みについて説明する.最後に,本プリンテッドエレクトロニクスの現状の課題等,今後の展望について説明する.

キーワード:フレキシブルセンサ,プリンテッドエレクトロニクス,健康管理デバイス,無機ナノ材料

1.背     景

 Internet of Things(IoT)コンセプトの普及により,‘もの’・人・建造物などからの情報取得及びそれに対するフィードバック制御・管理・監視を行う技術開発が盛んになっている.信号処理等には人工知能や機械学習といったソフト面からの大きなブレイクスルーにより,我々の生活が徐々に変わりつつある.次世代のIoTコンセプトを築くには,ソフト面の発展に加えハード面での革新的な発展が必要とされる.筆者が考える次世代のIoTは,様々な表面に違和感なく,また大面積・低価格でデバイスを貼付し様々な情報を取得するものである.これにより多くの情報を一括取得し,そのデータ解析及びフィードバック制御により人とデバイスのインタラクションといったこれまでの一方通行の電子デバイスの利用とは異なった新しい応用展開が広がる.現状ハード面の技術としてSi半導体技術による信号処理回路,無線回路,センサが使用されている.本従来技術では,多くの情報を得るには多くの硬いセンサを実装する必要があり,デバイスコストが掛かり,更に最終デバイス機器が硬い半導体センサによりごつごつしてしまい,様々な表面に大面積貼付するといった応用には難点がある.本課題解決及び次世代情報社会を支える電子デバイス技術として,印刷技術により大面積形成可能な柔らかいフレキシブルセンサが注目を集めている.印刷技術により様々なセンサを一括形成することが可能になれば,センサチップの実装が不要になり,また機械的柔軟性の確保ができ,低価格で人を含む様々な表面にばんそうこうやポスターのように多種センサアレーを貼付することができる.このような多種センサシート技術と人工知能技術等の最先端の技術融合により,近い将来全く新しい情報化社会の実現が期待できる.

 筆者らのグループでは,本取組みへの貢献として壁紙やロボット皮膚,更には人の皮膚表面からの情報取得を目指し,印刷形成による多機能フレキシブルセンサシートの開発を行ってきている(1)(10).そこで,本稿では,筆者らがこれまでに開発してきた印刷形成による各種センサとそれを用いた健康管理パッチについて紹介する.

2.印刷形成によるフレキシブルセンサ

2.1 ひずみセンサ


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