特集 2-4 太陽電池でIoTデバイスを駆動するパワーマネジメント技術――電池交換を不要にしてIoTの活用範囲を拡大――

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Vol.102 No.5 (2019/5) 目次へ

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2. IoTを支える技術

特集2-4

太陽電池でIoTデバイスを駆動するパワーマネジメント技術

――電池交換を不要にしてIoTの活用範囲を拡大――

Low Power Management Technology for Driving IoT Devices with Solar Cells

中本裕之

中本裕之 正員 (株)富士通研究所IoTシステム研究所

Hiroyuki NAKAMOTO, Member (IoT Systems Laboratory, Fujitsu Laboratories LTD., Kawasaki-shi, 211-8588 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.5 pp.403-407 2019年5月

©電子情報通信学会2019

abstract

 多くのデバイスの情報を収集・分析するIoTシステムにおいて,その導入・運用には,デバイスへの電源供給方法,すなわち,電源設置工事や電池交換のコスト増加が大きな課題となる.本稿では,デバイスのメンテナンスコスト削減に有効な,太陽電池でデバイスを駆動するパワーマネジメント技術について紹介する.従来の電源変動を抑制する手法とは異なり,動作可能な範囲内でその変動を許容する電源制御が特徴である.本技術を無線ビーコンに適用し,44lxの暗所での動作,SIGFOXを利用した約7kmの長距離通信が,親指サイズの小さな太陽電池で実現できることを確認した.

キーワード:パワーマネジメント,太陽電池,メンテナンスフリー,無線ビーコン

1.開発の背景と目的

 近年のデバイス性能の飛躍的な向上と通信規格の低消費電力化により,高性能なセンシングデバイスが安価に入手できるようになり,Internet of Things(IoT)としてのデータ普及が拡大している.2021年には,100億台以上のモバイルデバイスがネットワークにつながるという予測もあり(1),多くのセンシング情報から価値を見いだすためのアルゴリズム開発やArtificial Intelligence(AI)を用いた分析にも注目が集まっている.

 一般的なIoTを用いたシステムは,図1に示すように,現場(フィールドエリア)から取得したセンシングデータを,ゲートウェイや基地局を経由してクラウドやサーバに送り,そこで分析や予測が行えるように構成されている.あるいは,受信したデータを基にゲートウェイで簡単に処理できる場合は,クラウドを使用せず,IoTデバイスとゲートウェイを用いてサービスを実現することも可能である.例えば,美術館の作品近傍にBluetooth Low Energy(BLE)等の近距離無線送信が可能なビーコンを各々設置する場合は,スマートフォンを用いた作品紹介サービスが実現できる.

図1 IoTシステム構成


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