特集 2-6 IoTにおけるエッジ/フォグコンピューティング技術

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Vol.102 No.5 (2019/5) 目次へ

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2. IoTを支える技術

特集2-6

IoTにおけるエッジ/フォグコンピューティング技術

Edge/Fog Computing Technologies for IoT Applications

菅原真司

菅原真司 正員:シニア会員 千葉工業大学工学部情報通信システム工学科

Shinji SUGAWARA, Senior Member (Faculty of Engineering, Chiba Institute of Technology, Narashino-shi, 275-0016 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.5 pp.413-417 2019年5月

©電子情報通信学会2019

abstract

 今日のインターネット上で提供される多様なサービスは,クラウドコンピューティングの利用を前提として更なるユーザの利便性と性能の向上を日々追求している.IoTの活用においても同様にインターネットがプラットホームとしてよく用いられるが,ネットワークの末端(エッジ)に位置するセンサや端末の役割が大きいため,クラウドをエッジ方向に拡張する技術であるエッジ/フォグコンピューティングが注目されている.本稿ではそれらの技術の概要と応用例をIoTとの関係に絞って述べる.

キーワード:エッジ/フォグ/クラウドコンピューティング,MEC,ITS,CoT,リアルタイム性

1.ま え が き

 IoTを含む今日のインターネット上の様々なサービスは,クラウドコンピューティング(Cloud Computing)の利用を前提として,更なる利便性と性能の向上を求め日々新たな進歩を続けている.エッジコンピューティング(Edge Computing)やフォグコンピューティング(Fog Computing)などの技術も,これに含まれる.両者は時にその区別が曖昧であることもあるが,前者は大規模ネットワークの辺縁(network edge)に置かれた端末・デバイス等のリソースであり,後者はクラウドの裾に漂う霧(fog)のように,やはりネットワークの辺縁にあって,クラウドと端末を仲介するリソース群と理解できる.どちらもクラウドの機能の拡張,あるいは補強と考えられる.

 本稿では,上記のようなエッジ/フォグコンピューティングの構成とそれがIoTにいかに貢献し,発展しつつあるのかについて述べる.これ以降,2.ではエッジ/フォグコンピューティングの概要について述べ,3.ではこれらを用いたIoTにおけるサービスについて,幾つかの事例に基づいて概観する.4.において今後の課題と展望について簡単に触れ,最後に5.を本稿のむすびとする.

2.IoTにおけるエッジ/フォグコンピューティングの概要

2.1 エッジ/フォグコンピューティングの構成

 エッジ/フォグコンピューティングのリソースは,ネットワークの最も末端に位置する端末(Terminal),とりわけIoTにおいてはユーザが携帯する移動端末や,種々の情報を収集するセンサの類いから送信される情報の,各サービスに対応した処理・蓄積,及びそれらの結果の更なる発信を行う.その際に,厳密な定義があるわけではないが,一般にはエッジコンピューティングのためのリソースはより端末に近いところ,または端末の一機能として配置され,独立してクラウド等との情報交換を行う役割が与えられる.これに対してフォグコンピューティングのためのリソースはエッジよりややクラウド寄りに位置し,各センサや端末の情報の集積・一次処理を担い,クラウドと連携して動作する.多くの場合,以下の図1に示すような三つのレイヤから成る構成で実現されると考えられる(1)


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