特集 3-1 5G時代の自動車のコネクティビティ

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Vol.102 No.5 (2019/5) 目次へ

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3. IoTの活用分野と応用例

特集3-1

5G時代の自動車のコネクティビティ

Connected Car towards 5G Era

牧戸知史

牧戸知史 正員 (株)豊田中央研究所システム・エレクトロニクス1部

Satoshi MAKIDO, Member (System & Electronics Engineering Dept. I, Toyota Central R & D Labs., Inc., Nagakute-shi, 480-1192 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.5 pp.423-427 2019年5月

©電子情報通信学会2019

abstract

 100年に一度と言われる大変革の時代に直面している自動車業界にとって,5Gのサービス開始は車そのものの付加価値を大きく変えるものとして期待されている.超低遅延のリアルタイム通信が実現されることで,認知,判断,制御といった車にとっての重要な機能を拡張し,大きな変革をもたらす可能性を秘めている.低遅延な通信を利用することで初めて実現が可能であるダイナミックマップ,協調センシング,遠隔自動運転などの研究開発事例を紹介し,5G時代のコネクテッドカーの可能性について概説する.

キーワード:コネクテッドカー,5G,エッジコンピューティング,協調センシング

1.は じ め に

 自動車業界は「100年に一度」と言われる大変革の時代に直面し,EV化や自動運転などプラットホームそのものを変えていくことを余儀なくされている.2016年10月のパリモーターショーにおいて,Daimler社のDr. Dieter ZetscheはCASEと呼ばれる概念について次のように提唱している.

 “Connected, Autonomous, Shared, Electric: Each of these has the power to turn our entire industry upside down. But the true revolution is in combining them in a comprehensive, seamless package.”

 また,トヨタ自動車の豊田章男社長はCES2018のプレスカンファレンスにおいて,次のように述べている.

 「私はトヨタを,クルマ会社を超え,人々の様々な移動を助ける会社,モビリティ・カンパニーへと変革することを決意しました.」

 これらの変化は,単に社会的な要請によるものではなく,近年の急速な技術発展の寄与も大きい.モバイルネットワークの高速・大容量化,AI技術の発展などによってITS(高度交通システム)を取り巻く環境が大きく変化しており,コネクテッドカーの普及により,新たにどのような付加価値が生まれ,社会変革が生み出されるのか注目されている.

 総務省は,2016年12月に“Connected Car社会の実現に向けた研究会”を設置し有識者による検討を行い,2017年7月に取りまとめを公表している(1).取りまとめでは,

 “車からのデータを収集・分析し,車向けサービスにフィードバックすることが必要になることから,そのために必要となる「双方向性」をConnected Carの必要要件と考えたところである.”

と述べられている.

 コネクテッドカーの取り扱う範囲は非常に広範であり全てを語ることは難しい.テレマティクスサービスなどの現状のサービスの延長については文献等(2)(6)に譲るものとし以下では,現在,研究開発レベルの技術を中心に,来るべき5G時代の実現が期待される技術について紹介する.

2.5Gで変わるコネクテッドカー


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