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小特集
生体機能の“安全”な計測・評価を目指して
編集チームリーダー 井ノ上直己
近年,人の生理機能を計測するセンシング技術,計測されたデータを解析する情報処理技術が進化してきており,人の生理機能を計測・評価し,これに応じて対処することが可能となってきている.例えば,筋電図のデータから,人の肉体的疲労がどの程度の水準にあるかを客観的に見積もることも行われており,リハビリテーションやスポーツへの応用では重要な基礎データとなっている.しかし,人の生体システムは複雑であるため,計測されるデータはこの複雑さを反映したものである.そのため,複雑さの捉え方によって誤った対処をしてしまうリスクがあるのも現状である.そこで本小特集では,生体機能の計測・評価のために理解すべきポイントを整理することを目的に,種々な分野で取り組んでおられる研究者の方々に生体機能計測・評価の現状と今後の課題について紹介頂いた.
まず第1章で,生体機能の計測・評価に関連する各分野の現状を紹介する.1-1で,関連する分野における概要を木竜 徹氏に俯瞰的に紹介頂く.1-2で,身体運動(筋肉活動)の計測・評価について紹介するが,筋音図を用いる手法を岡 久雄氏と福原真一氏に,また筋電図を用いる手法を増田 正氏に紹介頂く.1-3では,生体機能計測による肉体的疲労と精神的ストレスを評価する方法について紹介する.肉体的疲労を数値化する手法について赤澤 淳氏と吉田正樹氏に,精神的ストレスの評価に関する現状を塩入俊樹氏に紹介頂く.
次に第2章で,生体機能の計測・評価に関する理論と技術の両面から現状を紹介する.2-1で,人間の複雑かつ多自由度な運動を少数の機能単位の組合せによって説明しようとする筋シナジー仮説にスポットを当てる.ロボティクスの観点から筋シナジー仮説を用いて5指駆動形筋電義手を制御する技術を辻󠄀 敏夫氏と古居 彬氏に,神経生理学の観点から筋シナジー戦略について神﨑素樹氏に紹介頂く.2-2で,実験室で精密に計測・解析されたデータ(ディープデータ)と日常生活空間で計測される大量のデータ(ビッグデータ)とを組み合わせる技術について持丸正明氏に紹介頂く.2-3で,生体計測データをよりどころにして複雑な生体システムを理解する理論構築を目指した取組みを赤松幹之氏に紹介頂く.
第3章で,生体機能計測の応用例としてリハビリテーションを取り上げる.3-1で,脳内の電気活動から発生する磁界の計測技術と磁界を制御して脳に刺激を与える技術とを用いたリハビリテーションの現状を大西秀明氏に,映像提示に同期して体性感覚刺激を併用することで脳可塑性を誘導してリハビリテーションに役立てる技術について金子文成氏に紹介頂く.3-2で,バーチャルリアリティ(VR)を用いたリハビリテーションに生体信号計測を併用した事例を杉田典大氏と吉澤 誠氏に紹介頂く.
第4章で,応用分野として健康・スポーツを取り上げる.4-1で,身体活動時に人が認知する努力感覚や疲労感覚などの感覚系の知覚に関して林 容市氏と田中喜代次氏に,4-2で日常生活下において長時間モニタリングする際の生体機能評価の課題や有用性について早野順一郎氏に紹介頂く.
最後に,お忙しい中,本小特集の原稿を御執筆頂いた執筆者の皆様,記事構成の提案や調整等で多大な御協力を頂いた小特集編集チームの皆様,学会事務局に深く感謝致します.
小特集編集チーム
井ノ上直己 中嶋 秀治 田中 正行 木竜 徹 黒川 茂莉 西川 由理 伊東 栄典 掛谷 英紀 河原 智一 芥子 育雄 河野 仁 坂本 雄児 鈴木 源太 髙橋 桂太 谷村 勇輔 戸田 真人 中野 大樹 西田 武央 藤田 悠哉 牧田 大佑 三浦 康之 森 健太郎 森川 幸治
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