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2. 生体機能の統合的な計測・評価のための理論と技術
小特集
2-1筋シナジー仮説に基づく生体機能の情報集約
2-1-1ロボティクスの立場から
――筋シナジー仮説に基づく5指駆動形筋電義手のバイオミメティック制御――
In Terms of Robotics: Biomimetic Control of a Five-finger Myoelectric Prosthetic Hand Based on Muscle Synergy Hypothesis
abstract
筋シナジー仮説とは,人間の複雑かつ多自由度な運動を筋シナジーという少数の機能単位の組合せによって説明しようとする理論のことである.近年,計測した筋電位信号から,機械学習技術に基づきこの筋シナジーを抽出しようという試みが行われており,臨床やスポーツ,ロボティクスなど幅広い分野での応用が進められている.本稿では,筋シナジー仮説とその応用に関するこれまでの研究について紹介するとともに,筆者らの研究グループで開発を進めている5指駆動形筋電義手とそのバイオミメティック制御について概説する.
キーワード:筋シナジー,筋電義手,バイオミメティック制御,確率ニューラルネットワーク,PID制御
人間の皮膚表面から計測される筋電位信号は,筋収縮時に発生する生体電気信号の一種であり,力の入れ具合や運動意図の情報を含んでいる.そのため,筋電位信号から人間の内的情報を読み取ることができれば,機械装置や情報機器の制御信号として利用できる可能性がある.特に,筋電位信号を制御に用いたロボット義手である筋電義手に関する研究は古くから数多く試みられてきた.
当初の筋電義手は,単純に筋電位信号の強度に応じて関節の動作速度を比例的に調整するものしか存在せず,そのほとんどが手の握り/開きや手首の屈曲/伸展のような自由度が1の運動を対象としていた.その後,より多くの自由度を制御可能な義手の開発が期待されるようになり,複数の電極から筋電位信号の特徴パターンを抽出することで操作者の動作を識別しようとする試みが盛んに行われるようになった.
動作識別において,古くは線形判別分析や自己回帰モデルなど線形モデルに基づく方法が一般的であったが,ニューラルネットやサポートベクトルマシンなどの登場により,近年では筋電位信号の特徴パターンと動作意図との間の非線形写像を学習的に獲得するアプローチが主流である(1).しかし,これらの方法では操作対象となる全ての動作を事前に学習する必要があるため,手指の動きのような複雑かつ多自由度の制御問題の場合には操作者の負担が増大してしまうという問題があった.
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