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3.リハビリテーションにおける生体機能の計測・評価の現状と今後
小特集
3-1 実環境でのリハビリテーション応用
3-1-1感覚入力と脳の可塑性
Sensory Input and Brain Plasticity
abstract
脳磁図を利用することにより非侵襲的に脳活動をミリ秒単位で計測することができる.一方,経頭蓋磁気刺激を利用すると皮質の興奮性の増減を非侵襲的に評価することができる.これらを組み合わせることにより,リハビリテーション領域において極めて重要な感覚入力時の皮質活動の経時的変化や,感覚入力による神経可塑的変化を観察することができる.本稿では,体性感覚刺激(感覚入力)による皮質活動の詳細と,体性感覚刺激を繰り返した後の一次運動野の興奮性変動について筆者らの実験データを中心に紹介する.
キーワード:脳磁図,経頭蓋磁気刺激,他動運動,機械的触圧覚刺激,可塑性(用語)
近年の医工学技術の急速な発展に伴い,多くの非侵襲的脳機能計測法が普及してきた.例えば,脳波(EEG: Electroencephalogram),機能的磁気共鳴画像(fMRI: functional Magnetic Resonance Imaging),陽電子放射撮影法(PET: Positron Emission Tomography),脳磁図(MEG: Magnetoencephalogram),近赤外分光法(NIRS: Near-Infrared Spectroscopy),経頭蓋磁気刺激(TMS: Transcranial Magnetic Stimulation)などがその代表的なものである.それぞれの機器には特徴があり,EEGやMEGは神経活動そのものを検出しているため時間分解能が非常に高い.更に,MEGで検出している磁界は,脳波で検出している電位と異なり,髄液や頭蓋骨,頭皮の影響を受けないため電流発生源の推定精度が良く,空間分解能も非常に高いという特徴がある.しかし,脳の深部の活動を検出することができないという欠点を伴う.一方,fMRIやPET, NIRSは脳の神経活動に付随する循環応答を検出しているため時間分解能がEEGやMEGより劣るという欠点がある.しかし,fMRIは脳の構造も同時に撮像し,かつ,脳深部の活動も検出できるという大きな利点がある.PETは時間分解能が非常に劣るが,様々なトレーサの種類を変えることにより,計測できる標的(糖代謝や酸素代謝,ドーパミン受容体等々)を変えることができるという利点がある.NIRSは時間分解能及び空間分解能ともに高くないが,他の計測機器に比べて身体拘束が少なく,自転車駆動などの粗大運動時における脳活動を検出できるという点が最大の特徴である.また,MEGやfMRI, PETは数億円の費用を要するが,EEGやNIRSは数百~数千万円(チャネル数による)で購入できるという利点がある.TMSは他の計測機器とは異なり,脳を磁気で刺激して末梢の筋から誘発される筋活動を検出し,皮質脊髄路の興奮性・抑制性を評価するものである.
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