小特集 3-1-2 視覚誘導性自己運動錯覚――脳内身体性システムに影響するVRリハビリテーションシステム――

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Vol.102 No.8 (2019/8) 目次へ

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3.リハビリテーションにおける生体機能の計測・評価の現状と今後

小特集

3-1 実環境でのリハビリテーション応用

3-1-2視覚誘導性自己運動錯覚

――脳内身体性システムに影響するVRリハビリテーションシステム――

Kinesthetic Illusion Induced by Visual Stimulation: The VR Rehabilitation System That Affects on the Embodied-system in the Brain

金子文成

金子文成 慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室

Fuminari KANEKO, Nonmember (School of Medicine, Keio University, Tokyo, 160-8582 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.8 pp.794-797 2019年8月

©電子情報通信学会2019

abstract

 本稿では,最近,橋渡し研究に取り組んでいる視覚誘導性の自己運動錯覚システムKiNvisの臨床的活用について紹介する.KiNvisは,閉鎖空間で液晶ディスプレイを見るBoxタイプとヘッドマウントディスプレイタイプの2種類がある.動画像に同期して神経筋電気刺激などの体性感覚刺激を併用することで脳可塑性を誘導するなどの効果を高める.映像内の身体像に身体所有感を生じ,映像内身体が動くことで運動を知覚するような錯覚を生じることから,脳内身体性システムの変容に寄与するアプローチであると推察する.慢性期脳卒中患者に10日間治療期間を設ける臨床試験の結果では,運動機能の改善とともに,安静時脳機能結合にも変化が見られた.

キーワード:運動錯覚,仮想現実,身体性システム,脳,ニューロリハビリテーション,脳卒中,運動

1.は じ め に

 脳卒中後には感覚や運動機能に麻痺を来すことが知られている.発症から6か月時点においては,約50%の割合でしか運動機能が十分に回復しないとされる(1).したがって,脳卒中後の上肢運動機能回復レベルを最大にすることは社会的に重要な意義がある.中等度以上の運動機能があれば(例えば,手指・手関節が基準以上に伸展する),集中的に課題依存的に運動療法を行うCI療法(Constraint-induced therapy)(用語)など,ガイドラインでも推奨されるアプローチがある.しかし,麻痺が重度になると,そもそも練習したい運動課題を遂行することができないので,アプローチすることが困難となる.

 筆者らは,運動イメージの脳内再生(2)(4)や映像刺激を用いて身体所有感(用語)や運動知覚など,身体性の意識に関連する認知神経科学的アプローチの生理学的・臨床的有効性を長年にわたり研究してきた(2)(15).随意努力による運動イメージの脳内再生に加え,特に注力してきたのが視覚刺激を用いて運動の知覚を錯覚させる視覚誘導性自己運動錯覚(KINVIS: Kinesthetic Illusion Induced by Visual Stimulation)である.最近では,臨床応用のための橋渡し研究に取り組んでいる.ここでは,その製品化されたシステム(名称:KiNvis)を用いた療法について紹介する.

2.システムの概要


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