電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
解説
光時分割多重(OTDM)研究が創出した最先端光技術とその将来展望
Advanced Photonic Technology for the Research of Optical Time-Division Multiplexing and Its Future Prospects
abstract
通信の多重化方式にはTDMとFDM(若しくはWDM)がある.光通信の急速な大容量化はEDFAとWDMに負うところが大きいが,TDMはどうであろうか.電子デバイスの限界を超えて動作するOTDMはWDMに比べて高度な新技術が要求されるため,今のところ実用性には乏しい技術である.しかし,最近ではコヒーレントナイキストパルスという技術により1チャネル当り7.7Tbit/s,周波数利用効率が9.7bit/(s・Hz)のような優れた報告がされている.本稿では1989年代から今日に至るOTDM研究に焦点を当て,WDM技術と比較するとともに,その将来を展望する.
キーワード:OTDM,WDM,ディジタルコヒーレント,周波数利用効率,ナイキストパルス
本稿を最初に依頼されたときの題目は“OTDM研究が残したもの”であった.確かに,波長分割多重技術(WDM: Wavelength Division Multiplexing)(1),(2)によって最近はテラビット伝送が当たり前になり,光時分割多重(OTDM: Optical Time-Division Multiplexing)技術(3)~(5)は消え去ったのではないかと思っている方も多いと思う.しかし,OTDM技術の研究は今も脈々と続けられており,最近では1チャネル当り7.7Tbit/sの世界最高の伝送速度でかつその周波数利用効率も10bit/(s・Hz)に近いものが得られている(6).このようなOTDM技術には最先端の超高速コヒーレント光パルス伝送技術が使われており,そのパルスには64QAMのような位相情報を載せている.
光通信の実用化はETDM(Electrical Time-Division Multiplexing)から始まりEDFA(Erbium-doped Fiber Amplifier)(7),(8)+WDM更にはディジタルコヒーレント+WDMと進んできており,安価に大容量伝送が実現されている.一方,最先端の光パルス技術を駆使するOTDM技術は複雑でかつ高価であり,システムの実用化という点ではWDMの後じんを拝する.しかし,OTDM技術は10~40GHz帯パルスレーザ,超高速光スイッチ,光ファイバの高次分散補償,ソリトン伝送など多くの分野で発展してきており,基盤技術として光通信への貢献は極めて大きいものがある(5).そこで本稿ではOTDM技術がどのような道をたどってきたのかを概観し,その将来を考えてみたい.
1980年代光通信の情報のコーディングには,コンピュータとの親和性が高くかつ帯域が少なくて済むNRZ(Non-Return-to-Zero)電気信号やパルス的なRZ(Return-to-Zero)電気信号が使われていた.その頃はまだEDFAは発明されていない.したがって,高速化を行うためにはETDMが基本となり電気段での多重化が行われ,電子デバイスの最高速が光伝送の最高速度を決めていた.また,この頃は無線通信におけるFDM(Frequency-Division Multiplexing),QAM(Quadrature Amplitude Modulation),OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などの技術は光通信には導入されていなかった.
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード