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編集チームリーダー 石原智宏
いよいよ,東京オリンピック・パラリンピック(東京2020大会)が開催される年となりました.言うまでもなく世界最大のスポーツイベントであり,今回も熱い戦いとすばらしい感動が見られるでしょう.そして本会会員の皆様は,どのような新技術が使われるのかも楽しみにされているのではないでしょうか.そこで2020年最初の本号では,国際的で大規模なスポーツ大会に関わる場面で使われる技術について,第一線で研究開発されている方々に解説して頂きました.競技で使われる技術はもちろんですが,会場周辺あるいは,会場とつながった遠隔地で使われる技術もあり,大会が盛り上がることが期待されます.
さて今回は特別に小池東京都知事のインタビューができましたので,冒頭に掲載しました.インタビューの中では,5GをベースとしたTOKYO Data Highwayの構想を語って頂きました.東京2020大会をきっかけに,東京のICT環境・利活用が格段に進みそうです.そして具体的な技術としては,以下の四つをピックアップしました.
「3Dセンシング・技認識による体操採点支援」では,体操競技の採点を支援する技術について解説して頂きました.まず体操競技の人による採点方法について説明があり,いかに大変なことであることがよく分かります.また,採点方法をディジタル化するには,単に技術の導入にとどまらず,ルールにまで踏み込むことが必要なことが説明されています.更に技術面では,3Dセンサ,認識技術など,既存のものでは十分でなく新たに開発したとのことで,なかなか開発に苦労されたことがうかがえます.この技術によって,採点の公平性がより高められるとともに,テレビ放送などにも使われて,更に楽しめる体操競技になっていくことが期待されます.
「超高臨場感通信技術の取組み」では,より高い臨場感を実現するために,映像の高解像度化に加えて開発している様々な技術を解説して頂きました.ここでは,特別な背景を用意せずに被写体をリアルタイムに抽出する技術,複数の4K画像をリアルタイムに合成するサラウンド映像合成技術,再生する音を空間的に移動させ高い臨場感を実現する音像定位技術が説明されています.これらの組合せによって実現する2020年のパブリックビューイングでは,どんなものが見られ・聴こえるかとても楽しみです.
「東京2020オリンピック・パラリンピックに向けたパブリックセーフティ」は,安全対策の話です.東京2020では全世界から大勢の人が集まりますから,その安全を守ることは非常に重要です.ここでは,顔認証をベースとしたセキュリティ技術を解説頂きました.オリンピック・パラリンピックでは関係者が30万人にも及び,その入退出管理,つまり本人確認だけで非常に大変なことだそうです.ここで解説がある「歩きながらの顔認証」では,人手による本人確認の2.5倍高速化を実現しているそうで,大変スムーズな入退出が実現できるものと思います.また,顔認証技術は,視線推定,行動検知などに進化しているそうで,オリンピック・パラリンピックに限らず,都市全体のセキュリティ向上に貢献することが期待されます.
「音声翻訳サービスによる多言語コミュニケーション支援」では,2020年を前に,既に使われている音声翻訳サービスについて解説頂きました.音声翻訳は,旅行中に使う個人的な利用から,各種ビジネスの接客での利用に発展しているそうです.各種ビジネスユースに特化したテンプレートを用意して,よりスムーズなコミュニケーションができるようにしていることが紹介されています.また深層学習技術がこの分野にも使われるようになり,翻訳精度の向上が図られているそうです.
今回,四つの技術を紹介しましたが,オリンピック・パラリンピックの期間に使われるということだけでなく,大会をきっかけとして日本の社会に根付いた「レガシー」となるのかも注目されます.それも,想像しながら読んで頂ければ幸いです.
特別小特集編集チーム
石原 智宏 石黒 仁揮 井ノ上直己 川喜田佑介 芝 宏礼 白戸 裕史 山中 直明 山本 琢麿
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