特別小特集 3. 超高臨場感通信技術の取組み

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特別小特集 3. 超高臨場感通信技術の取組み

南 憲一 深津真二 正員 日本電信電話株式会社NTTサービスエボリューション研究所

宮武 隆 堤 公孝 日本電信電話株式会社NTTサービスエボリューション研究所

外村喜秀 エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社エンタープライズビジネス事業本部

Kenichi MINAMI, Shinji FUKATSU, Members, Takashi MIYATAKE, Kimitaka TSUTSUMI, Nonmembers (NTT Service Evolution Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Yokosuka-shi, 239-0847 Japan), and Yoshihide TONOMURA, Nonmember (Enterprise Business Division, NTT Comware Corporation, Tokyo, 108-8019 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.1 pp.15-21 2020年1月

©電子情報通信学会2020

1.は じ め に

 映像や音響の分野では,より高い臨場感を実現するため,解像度やダイナミックレンジの向上,高圧縮・ハイフレームレート符号化などの技術が進展してきた.また,映像や音響の表現においては,従来のアスペクト比やチャネル数にとらわれない方法が提案されてきており,これらの技術により,人々に新たな体験と価値を提供することが可能になってきた.本稿では,このような体験や価値を提供するためにNTT(以下,当社)が2015年から取り組んでいる,超高臨場感通信技術「Kirari!」について紹介する.本技術は,「メディア制御」,「メディア処理」,「リアルタイム同期伝送」を実現する技術の集合であり,遠隔地にネットワークを介して,リアルタイムに競技空間やライブ空間を伝送,再現する.コンテンツによって構成技術の組合せを変えることで適切な再現が可能となる.

2.超高臨場感通信技術

 図1は,Kirari!の技術概要を示したものである.左側の本会場の空間・環境を右側の遠隔会場にリアルタイム中継する際,素材の取得から提示までの各プロセスにおいて,要素技術が存在し,これらの組合せによりKirari!が実現されている(1)

図1 超高臨場感通信技術の構成

 「任意背景リアルタイム被写体抽出技術」(2)は,ブルーバックやグリーンバックなどのスタジオ設備を用いずに,試合会場や演技している舞台映像からリアルタイムに被写体領域のみを抽出する技術で,機械学習を導入し,任意背景からの精緻な被写体抽出を実現している.抽出された被写体は後段のプロセスにおいて,擬似3Dで表示される.「サラウンド映像合成技術」と「超高臨場感メディア同期技術」(3)は,4K/8Kを超える解像度と広い視野角を有する映像をリアルタイムで合成・同期伝送する技術である.「臨場感デザイン技術(高臨場音像定位技術)」(4)は,複数のスピーカを並べてできるスピーカアレーを制御することで,様々な位置に音像を定位できる技術で,左右方向はもちろん,客席近くまで迫る奥行方向の音像定位にも対応している.また,ネットワーク帯域に応じて,映像符号化や音声符号化の技術が用いられ,あたかも現地で競技を見ているかのような体験を提供する.


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