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ハードウェアセキュリティの課題と展望
小特集 5.
Physically Unclonable Function(PUF)とその応用
Physically Unclonable Function(PUF)and Its Applications
abstract
IoT機器の真贋判定やセキュリティ機能の信頼点(trust anchor)の構築のための技術として,物理複製困難関数(PUF: Physically Unclonable Function)(1)が注目されている.PUFは物体の物理的特徴のばらつきからその物体に固有の情報を取り出す仕組みである.特に半導体デバイスのばらつきを利用してICチップ上に作製するPUFの研究開発が盛んに行われ,海外を中心に実用化されている.本稿ではPUFの特徴や応用例を紹介し,更にPUFの評価手法を国際標準化する取組みを紹介する.
キーワード:物理複製困難関数(PUF),真贋判定,主体認証,鍵生成,国際標準化
半導体デバイスや通信技術の進歩を背景に,膨大な数の電子機器やセンサ等がインターネットに接続されるInternet of Things(IoT)が構築され,快適で利便性の高いスマート社会が実現されると期待されている.安心・安全なスマート社会を実現するためには,不正機器を排除し,機密情報を保護するためのセキュリティ技術が欠かせない.
一方で,世界市場で発見される模倣品は近年急増している.ある報告では,2015年における世界の模倣品市場は190兆円(1.77兆米ドル)に達すると見積もっている(1).別の報告では,米国国防総省の調達兵器のうち1,800点,部品数にして100万個以上が模倣電子部品であったとしている(2).更に,ICチップに悪意のあるハードウェアトロイの木馬(Hardware Trojan)(3)を埋め込まれる危険性も指摘されている.
また,IoT機器は遠隔地にあるサーバと異なり,攻撃者が容易に入手あるいは物理的にアクセス可能であることも多い.そのため,IoT機器が不正機器とすり替えられるほか,機器内のICチップを開封され秘密情報を物理的にのぞき見られることが懸念される.実際,走査非線形誘電率顕微鏡(SNDM)を用いて不揮発性メモリの電荷を可視化できることが報告されており(4),不揮発性メモリ中の秘密情報はコストをかけることで抽出することが可能となりつつある.
このような模倣品市場の拡大や物理解析技術の進歩の中,IoT機器の真贋判定やセキュリティ機能の信頼点(Trust Anchor)の構築のために,Physically Unclonable Function(PUF)(5),(6)が注目されている.
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