特集 2-2 ファイバレーザコムの進展

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Vol.103 No.11 (2020/11) 目次へ

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2. 光周波数コムの光源開発

特集

     2-2

ファイバレーザコムの進展

Evolution of Fiber Laser Comb

西澤典彦

区切り

西澤典彦 正員 名古屋大学大学院工学研究科電子工学専攻

Norihiko NISHIZAWA, Member (Graduate School of Engineering, Nagoya University, Nagoya-shi, 464-8603 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.11 pp.1089-1096 2020年11月

©電子情報通信学会2020

abstract

 ファイバレーザは,小形・安定で,効率も高く,実用性に優れたレーザであり,現在,光周波数コムの主要な光源としての役割を担っている.これまで,Er,Yb,そしてTm添加ファイバを用いて,異なるモード同期手法を用いた様々なタイプのファイバレーザコムが開発されてきた.また,分光応用のため,広帯域化の取組みも進められている.最近は,一つの共振器から2種のコムを出力するデュアルコムファイバレーザの研究もホットである.本稿では,ファイバレーザコムの基礎からその種類,最近の開発状況までを筆者らの成果を例に挙げながら概説する.

キーワード:光周波数コム,ファイバレーザ,超短パルス,スーパコンティニューム

1.は じ め に

 ファイバレーザは,レーザ全体が光ファイバで構成されるため,振動等の外乱にも強く,長期的に安定な動作を得ることができる.また,利得媒質である希土類添加ファイバの中を励起光とレーザ光が重なって導波するため,高い励起効率を得ることができる.実用性の高いファイバレーザは,レーザ加工を中心に,各種のレーザ応用において活用されている.

 光周波数コムの分野では,ノーベル物理学賞が授与された2005年当時は,固体レーザベースのコムの方が特性が優れており,研究をリードしていた.しかし,その後のファイバレーザ技術の進展と光デバイスの開発・向上,そして多くの研究者の精力的な研究によって,ファイバレーザベースのコムの特性が大きく向上し,現在では最も安定で実用的なコム光源として光周波数コムの分野をリードし,製品も開発され,応用研究に活用されている(1)

 本稿では,ファイバレーザコムの基礎から広帯域化,デュアルコムファイバレーザの開発までを,筆者らの成果を中心に概説する.

2.ファイバレーザコムの基本構成

 ファイバレーザコムの全体構成の概要を図1に示す.

図1 ファイバレーザコムの全体構成の概要

 種となるレーザには,受動モード同期(用語)による超短パルスファイバレーザが用いられる.これまでに各種のファイバレーザをベースにした様々な光周波数コム光源が開発されてきた.


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