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3. 光周波数コムの応用
3-6
【分光系】
光コムの天文学への応用
Application of Optical Frequency Comb to Astronomy
太陽系外の惑星「系外惑星」の探索や,宇宙の加速膨張の直接検証の方法として,天体の視線速度の精密測定が有力である.視線速度は,ドップラー効果による天体光の波長変化を検出する「ドップラー法」により測定される.地球に似た系外惑星の検出には,1cm/s~10cm/sの測定精度が必要となる.精度の鍵の一つである天体分光システムの「波長標準」として,広いスペクトルと10GHz超のモードの周波数間隔を持つ「天文コム」を使うことが提案され,開発競争が繰り広げられている.本稿では,その概要について筆者らの取組みも交えて述べる.
キーワード:光コム,天文コム,レーザコム,視線速度測定,ドップラー法
宇宙において,地球やそこで育まれた生命がどのような存在なのか? 人類の抱くこの根源的な問いの一つに答えるべく,人間は科学の粋を結集して努力を続けている.その取組みの一つに,太陽以外の星を巡る惑星を探し出し,そこにどのような世界が広がっているか明らかにする「系外惑星探索」がある.その方法は幾つかあるが,地上からの観測で最も成功しているのは視線速度精密測定法,いわゆるドップラー法である.恒星の周囲を惑星が周回していると,恒星が僅かに揺り動かされ,恒星から届く光に含まれる原子分子の吸収線の波長がドップラー効果によって変化する.これを精密に測定することにより,惑星の存在を突き止めることができる.ドップラー法は惑星の質量や軌道の形を知ることもでき,地球から300光年くらいまでの比較的近くにある恒星における系外惑星探索の主流を成している.
惑星の動きにより生ずる恒星のふらつきは,惑星の質量が大きいほど大きい.ドップラー法では,波長(周波数)測定精度が,検出可能な惑星の質量の大小を決める.例えば,木星による太陽の揺り動かしは,視線速度変化の振幅が約13m/sである一方,地球によるものは約10cm/sである.これを波長500nmにおける波長シフト量(周波数シフト量)に換算すると,それぞれ22fm(26MHz),及び0.17fm(200kHz)である.ここでfm(フェムトメートル)は,10-15mに相当する.現在,木星程度の質量の系外惑星は検出できるようになったが,地球に似た系外惑星を見つけるには,これまでより100倍ほど高い測定精度が必要になる.
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