電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
3. 光周波数コムの応用
3-7
【通信系(周波数基準)】
光コムを用いた光ファイバ伝送技術
Optical Fiber Transmission with Wideband Optical Comb Source
繰返し周波数が10~100GHzのレーザ周波数コムは波長多重(WDM)光伝送において複数キャリヤ光源として魅力的である.それは単に,多数の単一波長レーザを1台の光源装置で置き換え可能と言うだけでなく,光コムの持つ安定な周波数間隔によって実効的な周波数利用効率が高まり大容量化に寄与することや,広帯域にわたる位相コヒーレンスを利用した個別のレーザ装置群では不可能な信号処理など様々な利点がある.近年の波長多重システムでは高度な変調フォーマットとコヒーレント受信機を用いており,光コム光源に対する要求性能は厳しい.本稿では,光伝送に用いる光コム光源の要求性能について触れるとともに,新型の光ファイバを用いた大容量伝送における使用例について紹介する.
キーワード:光ファイバ伝送,マルチコアファイバ,空間分割多重,光コム光源
光周波数コムのスペクトルは均一間隔で狭線幅の位相同期された周波数ラインで構成されている.光コムは二つの周波数自由度によって制御されている.一つは周波数間隔(あるいは繰返し周波数)であり,もう一つは周波数基準グリッドに対するオフセット周波数である.1990年代に実現された光コムと原子遷移とのコヒーレントなリンクにより(1),(2),高確度な光クロック(3),広帯域分子分光(4),マイクロ波合成(5),光測距(6)などに革新をもたらした.
一方,近年では,多数の研究機関において光コムを光通信用の光源に用いる試みがなされている.元々,光コムは広帯域波長多重(WDM)システムにおいて多数の単一波長レーザ光源を代替し,機器のフットプリントを軽減するために用いられた(7)~(9).しかしながら,光コムは単に多数の光キャリヤを一括生成するのみならず,その均等な周波数間隔によって,フリーランニングレーザに比べガードバンドが不要であり,光スペクトルをより有効に利用できる.更に,光コムは大規模伝送システムにおいてスーパチャネル伝送(10)や,ディジタル信号処理(DSP)を簡素化するために利用可能である.また,マルチコアファイバなどの空間分割多重(SDM)伝送システムにおいては,共通の光コム光源を用いたコア間の結合DSP処理スキームの実現や(11),(12),シード光伝送による光コム光源の複製と伝送スキームへの活用も行われている(13).光伝送において主として用いられる光コムは,本稿でも取り上げている高非線形ファイバを用いた低雑音トーン光のパラメトリック過程を用いたものであるが(14),ごく最近ではマイクロ共振器を用いた光コム(15),(16)が光伝送に利用され始めている(17).
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード