特集 3-8 【通信系(周波数基準)】光コムと高精度光周波数標準

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Vol.103 No.11 (2020/11) 目次へ

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3. 光周波数コムの応用

特集

     3-8

【通信系(周波数基準)】

光コムと高精度光周波数標準

Optical Frequency Combs and Precision Optical Frequency Standards

洪 鋒雷

区切り

洪 鋒雷 横浜国立大学大学院工学研究院

Feng-Lei HONG, Nonmember (Faculty of Engineering, Yokohama National University, Yokohama-shi, 240-8501 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.11 pp.1155-1159 2020年11月

©電子情報通信学会2020

abstract

 光コムの誕生による光周波数計測の発展は,高精度光周波数標準の研究にも大きな弾みを付けた.一方,光コムは単なるレーザの周波数を測る道具だけではなく,呼気の分析,惑星探索,加速器などの研究にとっても極めて有用な技術となっており,様々な応用分野にも大きなインパクトを与えている.本稿では,光コム研究分野の最近の発展を振り返りながら,光コムの広帯域化などのトピックスを紹介する.それから,国際度量衡委員会が勧告する光周波数標準を紹介した上で,最先端の光時計の研究状況を説明する.

キーワード:光コム,光周波数標準,光時計,光格子時計,周波数安定化レーザ

1.は じ め に

 今から約20年前に,光科学の分野において大きな技術革新が起きた.今まで困難であったレーザ周波数計測のツールとして,光周波数コム(光コム)が誕生したのである(1),(2).光コムは,モード同期レーザから発生する超短光パルス列のことで,フーリエ変換で決まる周波数軸上のスペクトルが等間隔に並んだたくさんのモードの姿をとることから,くしの歯に見立てて,光周波数のくし(コム)と呼ばれるようになった(3).周波数軸上のくしの間隔と位置をマイクロ波領域にある周波数標準を用いて固定することで,光コムは光周波数の定規のようにレーザの周波数計測に用いることができる.ドイツのヘンシュ(T.W. Hänsch)教授と米国のホール(J.L. Hall)博士は,「光コム技術を含む,レーザを使った精密分光の発展への貢献」が認められ,2005年度のノーベル物理学賞を受賞した.

 光コムの誕生による光周波数計測の発展は,光周波数標準の研究にも大きな弾みを付けた.今まで新しい光周波数標準を開発しても,周波数を測ることができなかったので,その評価は常に困難を伴った.光コムが誕生してから,様々な光周波数標準が新たに開発されてきた.中でも東大工学部の香取が提案した「光格子時計」(4)は,従来有望とされていた「単一イオン光時計」(5)よりも優れた特性を持っているということで,瞬く間に光周波数標準の主役に躍り出た.一方,光コムは単なるレーザの周波数を測る道具だけではなく,化学分析,宇宙物理などの研究にとっても極めて有用な技術となっており,様々な応用分野にも大きなインパクトを与えている.


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